内容説明
世界には二種類の人間がいる。―甚大な汚染事故、消費社会の猛威、情報メディアの氾濫、オカルトの蔓延、謎の新薬の魔手、いびつな家族関係、愛の失墜、そして、来るべき“死”に対する底なしの恐怖…。日常を引き裂くこの混沌を、不安を、哀切を、はたして人々は乗り越えられるのか?現代アメリカ文学の鬼才ドン・デリーロの代表作にして問題作、そして今なお人間の実存を穿つポストモダン文学随一の傑作が、より深く胸を打つ魅力的な“新訳”として装いも新たに登場!!
著者等紹介
デリーロ,ドン[デリーロ,ドン] [DeLillo,Don]
1936年、ニューヨークに生まれる。アメリカ合衆国を代表する小説家、劇作家の一人。1971年、『アメリカーナ』で小説家デビュー
都甲幸治[トコウコウジ]
1969年、福岡県に生まれる。現在、早稲田大学文学学術院教授(アメリカ文学)
日吉信貴[ヒヨシノブタカ]
1984年、愛知県に生まれる。現在、明治学院大学等非常勤講師(現代英語文学)。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
41
旧訳を読んだのはほぼ7年前(!)で手元にもないため訳文を比較することは出来ないが、流石二人の翻訳家が携わっているだけあって非常に読みやすい。やはり凄まじい傑作だ。全貌が捉えられない巨大な構造物に臨んでいるという感覚は、新訳版では尚更に強く感じたように思う。映画版も公開されて話題を呼んでいるので機会があったら見てみたい。2022/12/26
花乃雪音
16
ジャック・グラッドニーはドイツ語ができないのに大学でヒトラー学を教えている。ある日、町に広まった有害物質を摂取する破目にあう。いつかわからぬ死の宣告を受けることになる。日本企業の名前が出てくる所に1980年代を思わせ死の恐怖は2020年代を思わせてくれる。ジャックを複雑で歪な人物として描写され、これが現代のリアリティを表しているそうだ。このような現代の解像度のみを高くして過去を相対的に低く見えるような物の見方に疑問を持ってしまう。2025/05/19
eirianda
15
資本主義社会の歪を描いたこのお話は、まさにここ数年の世界の流れではないか。これを40年前に書いたというから、デリーロ天才。命にかかわるさまざまな危機に遭遇しながらも、懲りることなどまったくなく、さらに物質は進化していき、情報は溢れ出し、私たちはそれらを消費するのに必死。でも命は限られてるのよねぇ、トホホ。2023/05/06
のりまき
14
頑張って読みました。『沈黙』は好きだったのに、これはなかなか進みませんでした。結局何だったのだろう?コメディだと思って納得することにします。2023/08/06
ぽち
11
極私的に読書傾向が近いようでズレてもいるのがいい塩梅の『ド嬢』施川氏が「ベスト級に好きな作品」というので読みたいなと思っていたのだけど旧訳版は一万数千円まで高沸していて見上げていた、というところで昨年末の映画化に合わせて新訳が刊行されました!ありがとう都甲さん水声社さんネトフリさん。が小説の内容に関してはほぼ予備知識なく、デリーロがあの浩瀚な「アンダーワールド」の作者ということすら認識していない状態での私にはめずらしい読書。巻頭に付されている登場人物紹介を見ると複数回の結婚離婚歴を経ている中年男性が主人公2023/02/13