内容説明
1995年、プラハで奇妙な噂が流れた―あの世で作曲を続けているショパンの声を聞き、楽譜に書き起こしている女がいる。メディアは連日インタビューに押しかけ、レコード会社は音源化を熱望する。事の真相を究明するべく取材を始めたルドヴィーク・スラニーは、思いもかけない出来事に次々と遭遇する…。日常と非日常の境界を巧みにゆるがすストーリーテラーの最新作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夏
29
1995年のプラハ。ヴェラ・フォルティーノヴァーという女性がショパンの霊と交信し、ショパンの曲を作り続けているという噂が流れた。ルドヴィーク・スラニーはその噂が本当かどうか調査を開始するのだが、彼は最初から反対の姿勢をとっている。なんとか女性の不正を暴こうと必死になり、空回りしている姿が痛々しい。物語は噂が本当か否かが軸になっているのだが、わたしがこの小説に魅せられたのはこの小説が持つ雰囲気や文章力だ。この話が他の作家によって書かれたなら、ここまで引き込まれることはなかったかもしれない。2024/05/14
きゅー
9
テレビのプロデューサーであるルドヴィークは、ある女性に関するドキュメンタリー番組を撮影することになった。その女性が言うには、時々ショパンの霊が目の前に現れて、自分に未発表の楽譜の記譜を手伝わせるという。ルドヴィークは彼女がペテンをしていると確信し、それを暴こうと私立探偵を雇って彼女を監視させる。舞台は1995年のチェコであり、この場所と時間が重要なのかもしれない。1989年に勃発したビロード革命により、チェコスロバキアの全体主義政党は打倒され、国はチェコとスロバキアに分割されている。2022/11/07
Totchang
8
「ショパン」で検索したらヒットした作品。チェコの政治史を知らないのでややこしく感じた。共産党による党員の粛清や非共産党員の排除などの時代の生活が、現在の生活と比較されながら出てくる。主題はショパンの亡霊が老女の体を借りて未発表の作品を世に送り出す事の真相を突き止める記者の動きである。記者はこの老女にあの佐村河内守を重ね、詐欺ではないかと裏を暴こうと動くのだが・・・。作者のファーユは「あの世」「異界」界隈のテーマを描く作家のようだ。三途の川という境界とともに、西側と東側の境界までも描いた作品だった。2023/03/09
qoop
4
ショパンの霊と会話し死後の新譜を生み出すと称する女性。彼女は日常と超常を繋ぐ者か、唯の詐欺師か。国の形や政治体制といった条理が動き続けるチェコを舞台に、幻想小説的設定とミステリ的展開に基づいて不条理を現実に落とし込んで認識の枠組みを揺さぶる佳品。2023/10/10
warimachi
4
まさか翻訳小説読んでて佐村河内守なんて名前を見ることがあろうとは。2022/08/13