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内容説明
極北のヌーヴォー・ロマン。不可解な死をめぐって展開する謎めいたエクリチュール。錯綜した言葉の森の果てにぼんやりと立ち現れる…破局…解体…。ロブ=グリエやベケットの絶賛をあびた著者の代表作。
著者等紹介
パンジェ,ロベール[パンジェ,ロベール] [Pinget,Robert]
1919年、スイスのジュネーヴに生まれ、1997年、フランスのトゥールに没した。1946年以降、パリに住み、ロブ=グリエやベケットとの交流のなかから、特異な作品を多数発表した
堀千晶[ホリチアキ]
1981年生まれ。現在、早稲田大学ほか非常勤講師。専攻、フランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のりまき
16
訳がとても良くて苦手な感じの小説かなと思ったのに、面白く読みました。一つの言葉にいくつも隠された意味があり、訳すのは大変だったろうな。繰り返す平行世界。厩肥の上の死体は誰か?鴨を届けに来たのは?引き出しに入っていたのは遺書なのか請求書なのか?そもそもカラスなのかカササギなのか。後半、死体が誰でなぜそうなったか明かされたと思ったらまた混沌。解説読んで、また最初から読み返してしまいます。2021/06/03
みつ
13
標題に惹かれて手に取った本。果たして読み終えたといえるのか、全くもって心許ない。直接話法が全くなく、様々の人物の視点が目まぐるしく交錯し、断片的な描写が繰り返される。冒頭示された死者が誰かもわからずじまいであった。長文の『「訳者あとがき」に代えて』に眼を通しても、ベケット未経験の自分には歯がたたない。この「わからなさ」は、映画『去年マリエンバートで』(脚本がロブ=グリエ)を観て感じたものに似ていることに気付いて以降は理解することを放棄して、1時間半の映画を観続けるように、言葉の迷宮を彷徨うことに。(続く)2021/09/26
ぽち
9
厩肥のうえで男が死んでいた、死んでいる、情景を見た、見ている、発見された男はすでに硬直していた、本が床に落ちていた、余白に書き込む作業、冷え切った部屋の床に落ちた本. . . 硬質な文章で奏でられる変奏、あいまいな視点、錯綜する時間軸、有限の溶解、無限への接近2024/01/29
れどれ
8
不確実、不定、不明の具合がすさまじい。「ここ」も「これ」も「この」も定まらない。「だれ」も「いつ」も絶えず揺れ、振れている。それが東洋的な像を結ばない靄とまるで違って、どうしてか輪郭を保ったまま無数の残像を散りばめてる感じで、もうなにがなにやらだ。文体はめまぐるしく、読んでると意識と無意識とを高速で往還させられる。まるでゴダール映画のモノローグで抑揚ひかえ気味のフランス語が延々畳みかけてくるあの調子。読んでいるだけで耳に心地いい。恍惚。とろけるとろける。2023/04/07
mim42
7
差異と反復。ズレ。エンディング近くで完全にベケット三部作が出現し「B'zとモトリー・クルー」の古い件を思い出す。つまりオマージュらしい。作者はベケットやロブ=グリエとも知己らしく。「ヌーボー・ロマン」なるテクニカルタームで一括りにしたくなる気持ちがよくわかる。でも私はこの作品の情景が大好きだし(特に「邸」という言い回し)、何なら私も反復描写に参加したいぐらいだ、と思った。2022/05/12