内容説明
2022年2月、ある日曜日。原因不明の大停電が日常を覆った。電子機器の故障、ネットや電話など通信の途絶、暗闇と静寂。非常事態に困惑する人々が徘徊し、暴動に揺れる真夜中の大都会。闇を怖れるように集った5人は何を思い、何を語り、何を求めるのか。夜は深まり、あまりにも静かな黙示録がはじまる―戦争と陰謀の足音、日常にひそむ不条理、意思疎通の不可能/不可解を突きつけるデリーロ最新作!
著者等紹介
デリーロ,ドン[デリーロ,ドン] [DeLillo,Don]
1936年、ニューヨークに生まれる。アメリカ合衆国を代表する小説家、劇作家の一人。1971年、『アメリカーナ』で小説家デビュー
日吉信貴[ヒヨシノブタカ]
1984年、愛知県に生まれる。現在、明海大学専任講師(現代英語文学)。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
41
デリーロ作品は読み終えた後に感想として言葉を組み立てるのが非常に難しいものが多い。中でもこの短い作品は際立っている。しかし、150ページに満たないこの小品が、大長篇であった過去作と変わらぬ巨大感を備えていることだけははっきりと言えるだろう。デリーロは自身の作品を段々と削ぎ落としていっているように見える。いや、凝固させていると言うべきか。個人的な好みで言えば、十分な物語性を備えていた『リブラ』や『アンダーワールド』、『ホワイト・ノイズ』の方が好きではある。2021/05/29
hiroizm
17
米国一番のスポーツイベント、スーパーボールのキックオフ直前に大規模な停電が発生、テレビはもちろんスマホなど通信機器も不通となる。テレビ中継を仲間同士で観戦しようとある家に集まった人達の戸惑いを描きながら、現代テクノロジー社会の脆弱性と危機を問うた異彩を放つ小説。SFパニック映画っぽいありがちな設定だが、アインシュタインなど引用しつつ思弁的、シニカルで無常感漂う不条理劇風にまとめたのがポイントかな。翻訳が苦しい言葉遊び的な描写も多々あって、思いのほか読むが大変。でもなかなか面白かった。2021/07/23
のりまき
14
2022年2月に起こった大停電。原因は不明のまま。陰謀なのか、戦争の予兆か。飛行機が不時着して怪我をしてヴァンに乗って、診療所に行って受付の女性が長い長い話をする。この一連の流れがなんだか面白くて。いろいろ私は理解できてないのだろうけど、深刻な状況なのに滑稽で、ただ物語を楽しんだ。2021/06/28
29square
10
飛行機不時着!世界規模のネットワーク断絶!銃声の響かない世界大戦が勃発?!と緊迫感だけが独り歩き。登場人物は異常に饒舌だけど常にスベって唐突だし誰も相手の話なんか聞いてないし、特定の言葉に過剰反応する割には、お互いに無視か相槌だけ。 なんだコレって思ったとき、もしかしてSNSとかで起きてる事象を舞台劇化したらこうなるのかって考えたら…デリーロ天才かってなった。2024/06/07
Pustota
9
突然の停電、通信機器の停止。文明の利器に依存した日常の危うさや脆さを薄々感じながら、目を逸らしていることを突き付けられる。先の見えない沈黙がもたらす恐怖と混乱の中で、浮かび上がる人間自身の記憶と身体感覚への洞察が印象的だった。2024/02/13