感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mealla0v0
4
四方を南ア共和国に囲まれた小国レソトには、これまで多くの開発支援プロジェクトがなされてきた。だが、それらは悉く失敗してきた。筆者は、フーコーの「監獄の失敗の成功」の視点を取り上げ、開発の失敗が別の形で統治を成功に導いてきたのだと、膨大なフィールドワークから証言する。開発機構の専門家たちは、レソトの人々を「原始的な農業民」と捉えているが、実際は産業化されており読み違えている。したがって開発は失敗するが、開発機構の官僚制は発達した。加えて政治的な問題を開発の進展=技術問題へと脱政治化する。これが反政治機械。2021/08/22
人生ゴルディアス
2
リーマン前くらいによく見た国際機関の無能振りを暴く書籍だが、原著が1980年代のものであることを鑑みると、今も状況は変わっていないのではないかと思える。というのも、それは国際機関がつきぬけて無能と言うより、構造的な問題を抱えているせいなのではと本書を読んで思ったから。別の書籍でも何度も出くわす、田舎民への侮り、技術の政治的中立性への信仰、現実を無視した組織固有のKPIは、必然的にプロジェクト失敗をもたらすし、底に現地政治アクターが「開発プロジェクト」を利用しようとしてくることでさらに困難さを増す。2025/06/02