内容説明
“このなすがままの態度に誘発された情熱の波が彼女を陶酔させた。”家庭を捨てた自責の念にかられるリリアン、その前に現れる生き生きとしたジューナ、そして破滅的なサビーナ、ヘレン。画家ジェイを間にお互いに響きあい、共感の愛を見つけ自己を探求していく女性たち―作家ニンが経験したモダニズムのパリを舞台に描く愛の遍歴。
目次
1 この飢餓感
2 パンとウエハース
著者等紹介
ニン,アナイス[ニン,アナイス] [Nin,Ana¨is]
1903年、パリ郊外ヌイイ・シュル・セーヌに生まれる。九歳で両親が離別、十一歳の時に母と二人の弟と共にアメリカに渡る。二十代の時に夫とパリに戻り、ヘンリー・ミラー、アントナン・アルトーをはじめ多くの芸術家に影響を受け、1932年に最初の評論、『私のD・H・ロレンス論』を上梓。36年に最初の小説、『近親相姦の家』を発表。1963年から次々と出版した日記で脚光を浴びる。1977年死去
三宅あつ子[ミヤケアツコ]
兵庫県に生まれる。神戸女学院大学大学院文学研究科修士課程修了。現在、京都大学非常勤講師。専攻、アメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nightowl
1
書きたい情熱が迸った小説。ひとりの男を愛していると見せ掛けて女性たちが各々に様々な思いを募らせている様を書いた一冊。作者の手の中で踊っている登場人物たちはとても人形的でありながら、時折艶っぽい表現で迫って来るようでどきりとする。さり気無い仕草に色気を感じるような…そんな中、P.141の"子供時代に拒絶される行為は復讐したくてもどんなにたくさんの量を与えられてもなだめられないという宿命"という鋭い一文に今後も読んでみようかと思う。2019/06/23
里十井円
0
思いもよらないような比喩、つぎつぎ飛躍する情景、すべての文章が最高だった。2023/05/24