内容説明
芸術活動と労働について現況をさまざまな視点から捉え、芸術と労働、芸術と社会との関わりを考察し、その行方を探る試み。
目次
1 提起(労働と芸術の暗闇;「誰もが芸術家」というディストピア;労働者としての芸術家、芸術家としての労働者)
2 検証(アートマネジメントと、非物質的労働の価値;芸術労働とオリンピック―面従腹背のゆくえ;アートプロジェクトをめぐる協働のかたち―地域活動と大地の芸術祭サポート活動のあいだ;働くことと生きること、演劇のミッション)
3 想像(かまがみのいわれ;人間になるための労働―討議;帝国の教育制度)
4 懐疑(配慮の分有、脆弱さのネットワーク;「人間の終焉」のあとで―動物・芸術・人工知能;暗黙の共謀)
著者等紹介
白川昌生[シラカワヨシオ]
1948年、北九州市に生まれる。国立デュッセルドルフ美術大学卒業(マイスター)。美術作家。群馬県立女子大学、前橋工科大学等の講師を勤める
杉田敦[スギタアツシ]
1957年、北海道に生まれる。名古屋大学理学部物理学科卒業。美術批評家。女子美術大学教授。オルタナティヴ・スペース art & river bankを運営し、「critics coast」(越後妻有アートトリエンナーレ)、「Picnic」(増本泰斗との協働)、「ナノ・スクール」(blanClass)など、プロジェクトも手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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M
7
本著は芸術家が近代という資本主義社会の中で生きる上で、芸術と労働の違い、芸術の贈与性とそこに内在する非資本主義的要素を捉え直している。アメリカでは96%が芸術作品の意義を認めつつ、27%しか芸術家の重要性を認知していないようだが、日本でも大体状況は同様で、藝大などを卒業しても何割が芸術家として活躍しているのかと考えると、科学者同様に職業として成立しにくい構造がある。その属人的な側面も今日の情報社会とAIの普及により、オリジナルとは何かが問われている中で、新たな作品を生み出すというのは容易ではないのだろう。