出版社内容情報
スランプに陥った新進作家のまえに現れた謎めいたゴースト・ライター。
急速に親しくなってゆく二人の女性をめぐる、恐怖のメタフィクション!
デルフィーヌ・ド・ヴィガン[デルフィーヌドヴィガン]
原著
湯原かの子[ユハラカノコ]
翻訳
内容説明
スランプに陥った新進作家のまえに現れた、謎めいたゴースト・ライター。急速に親しくなってゆく二人の女性をめぐる、恐怖のメタフィクション!
著者等紹介
ド・ヴィガン,デルフィーヌ[ドヴィガン,デルフィーヌ] [de Vigan,Delphine]
1966年、ブーローニュ=ビアンクール(フランス)に生まれる。もっとも注目されているフランス女性作家の一人。作品は各国語に翻訳されている。『リュシル―闇のかなたに』(山口羊子訳、エンジン・ルーム、2014年。Rien ne s’oppose `a la nuit,J.‐C.Latt`es,2011)はフナック文学賞はじめ数々の賞を授賞した。『デルフィーヌの友情』も高校生の選ぶゴンクール賞を受賞
湯原かの子[ユハラカノコ]
上智大学仏文科卒。九州大学大学院、上智大学大学院を経てパリ第四大学文学博士号取得。上智大学他講師。フランス文学・比較文学専攻、評伝作家・翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
36
歪で不安定な女性2人の関係性が崩壊に向けて少しずつ緊張感を高めていく怖さ。その契機となる虚実を巡る文学的議論の充実度。そしてラストのわずか1文字で真相を藪の中にしてしまう構成の妙。これは圧倒的な完成度の傑作だと思います。2018/04/30
yumiha
28
タイトル「友情」なんて生易しいモンではありませぬ。デルフィーヌの前に現れた魅力的なL。「あっ!危険な匂いがする。近寄ったらダメ!」と何度も心の声を上げながら読み進んだ。読者が待っているのは「真実」だから、フィクションを書いてはいけないと何度も言うL。でも、エクリチュール(書くこと)そのものがすでにフィクションなのだと反論するデルフィーヌ。案の定、怖ろしい結末が待っていた・・。ってサスペンス風に仕立てられているけれども、何度もエクリチュールを読者に問い直させる作品だと思った。ラストの完*が、象徴的。2019/03/02
アヴォカド
13
挿入されるスティーヴン・キングのフレーズが、怖さを予感させ、象徴する。『ミザリー』と対になるようだと何度も思う。メタフィクションうんぬんはさておいて(面白さこそが判定基準なので)、2/3くらいまでは2人の女性の友情が丁寧にただ淡々と語られ、ハイスミスかデュ・モーリアかという「何かある」感がうっすらと漂うだけなのだが、その後のそれらの回収ぶりが見事というかすごいというか。『ユージュアル・サスペクツ』のネタバレはいいんでしょうかという老婆心。いや〜、最後の一語、怖いわ。2018/02/22
きゅー
12
スティーヴン・キングの『ミザリー』のように読者が小説家を束縛する物語ではあるのだが、他方で、作中で何度も話題にされるのは、小説とは何かという問い。小説はイマジネーションの産物なのか、それとも真実を写す鏡なのか。それは取りも直さず彼女の前作でのスキャンダラスな告白を受けてのことなので、先に『リュシル』を読んでおくと精神的に追い詰められるヒロインの姿がより迫真性を増す。また、本作は優れたサイコサスペンスでもあり、良い意味で非常に厭な一冊だった。2018/08/23
ブラックジャケット
4
各章のエピグラフはキングの作品から引用されている。女流作家デルフィーヌは母の自死をテーマにした最新刊の私小説が好評に迎えられた。しかしスランプに陥ったデルフィーヌに謎の女性エルが近づいてきた。有名人のゴーストライター でありアドバイスは的確、しかも同じ学校のクラスにいたという。ミステリアスな展開でミザリー的な恐怖が拡がっていく。虚と実が巧みにブレンドされ、読者は幻惑される。この感覚はドラッグ。デルフィーヌはエルを主人公にフィクショナルな物語を書こうとする。この新作は巡り巡って驚愕の結末へ。刺激的な一作。 2019/03/07