内容説明
フランス文壇きっての物語作者が拉致に挑む!ありふれた日常から突如として連れ去られた人々は、海の向こうの閉ざされた世界“北朝鮮”で何を見たのか―拉致被害者たちとその家族、新聞記者、さらには北朝鮮工作員たちの運命を半世紀という時間の中に交差させ、“拉致”という悲劇の核心に迫る!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ユーカ
19
北朝鮮による拉致事件をモチーフに真摯な姿勢で書き上げられたフィクション。巧みではあるが、華々しい表現もスリリングな展開もなく、淡々と物語は進むが、日本人なら誰もが知る国家がらみの大事件で、グイグイ引き付けられる。そして、哀しさがしとしとと雨のように降り注ぐ。また、日本人だけでなく、他の国々の人々もまた連れ去られていることに、今更ながらハッとさせられた。彼の国の中枢にいる人々に対する気持ちと、国に生きる人々に対する自分の気持ちは当然ながら違っていて、本書をきっかけにまた考えさせられた。良書だと思います。2017/11/04
きゅー
14
北朝鮮拉致事件を元に書かれてはいるが、本作はあくまでフィクションだ。また、政治的な小説ではなく、いたずらに事件性を煽るような文言もない。ここでは、違う国に無理やり連れてこられた少女たちの絶望が描かれる一方で、北朝鮮で生きることの希望も同様に綴られている。何度も言うが本書はフィクションだ。「希望」という言葉が真実とかけ離れていることも大いにあるだろう。しかし生きてさえいれば、彼女達にだって幸せに感じる時間がきっとあるはずだ。閉ざされた状況に置かれた人間の軌跡を追うことが本作品の意義なのだから。2017/11/16
刳森伸一
5
フランス人作家による北朝鮮の拉致問題を扱った小説。登場人物の名前は変更されているが事実関係としては現実に則したものとなっており、どの登場人物が誰に対応するのか読んでいて分かる。ただ、取材に基づいているとはいえ、登場人物の内心などは作者の想像によるものであり、その意味では作者が自ら宣言するように、あくまでもフィクションである。拉致をドラマチックな物語に仕立てるところは一切なく、様々な角度から淡々と語ることで、拉致の非人道的な側面とそれに負けない人の強さが浮かび上がっていると思う。2020/08/18
しょうゆ
2
北朝鮮フェア第二弾。フランス人によって描かれた、北朝鮮による拉致被害者のフィクション小説。あえてフィクションと銘打つのは、丹念な取材をベースにした限りなく事実に近いものだからである。同じ日本人として、恥ずかしいくらいこの問題について知っていることが少なく、読みながらwikiを総動員させて勉強になった。そして、読み終えて、横山めぐみさんは今どうしているのだろうと、自然と思いを馳せるような物悲しさを味わった。けっしてエンタメ性がある本とは言えないが、多くの人に読んでもらいたい一冊である。2017/04/14
zikisuzuki
1
北朝鮮拉致事件を題材にしたフランス人によるフィクションである。事件の被害者、その家族、事件を追った記者などを一人称に近い心象で描いている。まず、フランス人が描く日本人の心象に違和感が無い事に驚いた。モデルが確定出来る人物については事実に近い内容と思われ私の知らなかった事も多かった。2017/01/24