内容説明
病により八歳で夭折したアナトール。息子の死に衝撃を受けたマラルメは、千々に引き裂かれる思いを書き遺した…。長らく知られず作品としてまとめられることのなかったそのテクストと、文芸批評の泰斗リシャールの、魂を揺さぶる小論による双頭の書。
目次
ステファヌ・マラルメとその息子アナトール(我々はアナトール・マラルメについて何を知っているか;作品の計画・構造と形式;作品の計画・舞台と人物;作品の計画・思想と主題;本手稿の出版に関して)
『アナトールの墓』のための覚書
著者等紹介
マラルメ,ステファヌ[マラルメ,ステファヌ] [Mallarm´e,St`ephane]
1842年、パリ生まれ。1898年に没する。象徴派詩人。教師として生計をたてながら、詩の可能性を探究し、数々の詩作や批判を行った
リシャール,ジャン=ピエール[リシャール,ジャンピエール] [Richard,Jean‐Pierre]
1922年、マルセイユ生まれ。作家、批評家。エコール・ノルマルに学び、アグレガシオン(教授資格)を取得。パリ第四大学ソルボンヌ校教授等を務めた
原大地[ハラタイチ]
1973年、東京生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。パリ第四大学にて博士号取得。現在、慶應義塾大学商学部准教授。専攻、フランス語・フランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たーぼー
55
マラルメの息子、アナトールは8歳で死んだ。この誰も知らない少年の死を語るには、父としての悲痛と悟性でもって少年を普遍的なもの、宇宙的なものにしなければならない。しかし、一方で、その表現が道義本位では思索者マラルメの理論と概念は捨て去られるも同じ、というところにマラルメの苦悩をみる。新たな精神を構築する過程と既存の価値の破壊の果てにアナトールの救済があり、残された者は新しい生存へと連れていかれるのだろうけども、こうした見方は私の中では未知の考え方である。倫理的な表現だけでは分析出来ない事実が世の中多すぎる。2017/04/11
月
9
本書の後半にある本編(マラルメが書き留めた息子アナトールの死に関する覚書)から入るかどうか迷ったが、今回は訳者の意図通り、まずは本稿を読み解くための補助線を引く役割を担ったリシャールによるマラルメの覚書のための序文(⇔本文である覚書よりも長い序文)から入る。リシャールによる分析とその筆力は面白く印象深い。例えば、心的埋葬。それは思想の霊安室に子供を安置する。生の悲しい隷属から子供を自由にし、同時に死の絶対的断絶を乗り越えることを可能とする、精神的次元における解放の観念。 2016/11/09
Y.Yokota
4
マラルメは息子のアナトールを8歳で亡くした。その前後に書き留めていた詩、と呼ぶにはあまりに断片的である覚書が残っていて、その覚書とそれに対する考察が収録されている。マラルメの書くものは非常に難解で、ましてや断片ならなおさら翻訳は難しい、と訳者もことわっているが、単純にマラルメの慟哭は伝わってくる。”死を理解できないということは死を経験していないのと同じではないか、アナトールがわたしの中で一緒になり、はじめて彼は死ぬ” 曖昧ですがそのような言い方が頭に残っています。2021/06/29
寸心堂書店
1
アナトールは8歳で亡くなったマラルメの息子。マラルメはアナトールが亡くなった時、そのことを詩に書こうとしたけれど、結局書けなかった。その時のマラルメのノートとリシャールの読解。2016/01/11