内容説明
国際政治に翻弄された母国さながら、路を違えた双子の兄弟の声はヴァルター・ベンヤミンの生涯を介してこだまし始める…現代アフリカの政治と思想を鋭く描く“アフリカのランボー”の最新作!
著者等紹介
ワベリ,アブドゥラマン・アリ[ワベリ,アブドゥラマンアリ] [Waberi,Abdourahman A.]
1965年、ジブチ(当時はフランス領ソマリ海岸)の首都ジブチに生まれる。1985年、フランス政府の給費留学生として内地に赴き、カーンおよびディジョンで学ぶ。しばらく教職に就く。1994年、処女作『影のない国』(ベルギー王立アカデミー・フランス語圏文学大賞およびパリのアルベール・ベルナール賞受賞)、1996年、『遊牧民手帳』(アフリカ文学大賞受賞)発表の頃から作家生活に入る。フランス語圏のポストコロニアル文学の旗手のひとり
林俊[ハヤシタカシ]
1950年、広島県三原市に生まれる。通訳、翻訳業。日本文芸家協会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
30
母国ジブチにエージェントとして戻った兄とイスラム過激派として獄囚の弟。十数年間国外で暮らし多国籍企業に雇われた兄は、ウラン鉱脈の存在をにらんだ現状視察のため故郷に戻る。過激派に身を投じ刑務所で師の言葉を書き取って過ごす弟は情報を集め、家族を捨てた兄への報復をたくらむ。中東を食い物にしようとしている西欧の手先(本人は駒と呼んでいる)としてやってきた兄と原理主義に染まった弟のモノローグに、二人が惹かれる作家ヴァルター・ベンヤミンのテキストが混ざる。資本主義に生きる兄と原理主義に走る弟は国家の二つの貌であろう。2015/12/25
Porco
18
ジブチ出身のフランス語作家の小説。主人公の経歴は作者と似ていて、カナダのモントリオールに移住したジブチ人。経済情報提供会社の依頼で、調査のためにジブチに帰国します。一方、同国の刑務所には、イスラム教過激派組織に身を投じた双子の弟が収監されています。2021/09/02
きゅー
9
ジブチ共和国を舞台にジブリルと、牢獄に囚われているイスラム過激派のジャマルとの独白が交互に語られる。ジャマルは牢獄にいながら、ジブリルの様子を手にとるように把握し、彼の殺害を計画している。キリスト教徒とイスラム教徒、母国を捨てた者と母国に残った者、資本主義者とそれを憎む男。二人が対立する図式にありながら、いずれも権力によって利用されるコマにすぎないことが共通している。そして、徐々に彼らを繋ぐ糸が生まれる。それがヴァルター・ベンヤミンだ。彼の思想が文化の垣根を超え、二人を同じ方向に向かわせようとする。2021/03/26
読書実践家
6
名文で織り成される。神が人生に与える影響の大きさから色々考えさせられる。「過去には、未来ほどの興味はわかない、私の時間はとても貴重だ。」妙に印象に残る一文となった。2016/01/17
GO-FEET
2
浅学の身には少々手強かった…2015/11/10