内容説明
エッセイ?連歌?「ぼくは思い出す」という新ジャンルの誕生!ジョー・ブレイナード『ぼくは覚えている』に想を得て、四八〇の「忘れられた、どうでもいい凡庸な思い出」を列挙しつづける、ウリポの作家ならではの「記憶」をめぐる奇妙な試み。
著者等紹介
ペレック,ジョルジュ[ペレック,ジョルジュ] [Perec,Georges]
1936年、パリ生まれ。1982年、同地に没した。小説家。1966年にレーモン・クノー率いる実験文学集団「ウリポ」に加わり、言語遊戯的作品の制作を行う
酒詰治男[サカズメハルオ]
東京生まれ。甲南女子大学文学部名誉教授。専攻、フランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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兎乃
35
まずは翻訳者に拍手喝采。流石ペレキアン。本書はジョー・ブレイナードの“ぼくは覚えている”に端を発したペレックの遊戯と受け止めてよいのだけど、さて、どうしたものか私は嗚咽しながら読んだ。私は思い出す。なぜ“W”だったかを。なぜ“e”が消滅 disparitionしているかを。“ぼくには子供の頃の思い出がない”の一文が単なる修辞ではないことを。なぜ“イツェクとツィルラ”が“アンドレとセシル”に上書きされたかを。なぜ“木”が書けなかったかを。私は思い出す。そうして『Wあるいは子供の頃の思い出』の頁をめくる。2015/07/17
きゅー
6
ジョー・ブレイナードの『ぼくは覚えている』に着想を得た一冊。480もの断章が「ぼくは思い出す」という言葉によって語られる。映画俳優のこと、事件のこと、学校の同級生のことなど。しかし、ジョーの作品が傑作であったのに対して本作には疑問が残った。ジョーの作品を読めば、まるで私自身の記憶を思い出しているように懐かしく感じる場面が何度も出てくるのに対して、ペレックの作品はあくまでも彼だけが理解できる出来事を語っており、私には物語の普遍性を感じることが出来なかったからだ。2015/12/08
monado
5
「ぼくは思い出す~」でつづられる480篇の断章。思い出すのは昔のラジオCMなどのとるに足らないものがほとんどで、潜在意識が投影された夢の様な記述が続く。固有名詞を説明した訳注がすさまじい力作で、本文の数十倍くらい手間がかかってそう。10ページ読んでは、訳注を読むというスタイルがおすすめ。2015/07/02
onisjim
2
とりとめのない記憶の断片を集積したようでいて、すべてが「ぼくは思い出す...」という書き出しであるためか不思議な統一感と短文の小気味よさがある。マニアックとも言える訳注が付いているが、訳者の読みにしばられなくてもよいと思う。思い出を飛び石のようにたどるだけでじゅうぶん楽しい。2015/08/05
1
これは泣ける。2016/08/27