内容説明
1989年以降におこった大小さまざまな事象をもとに、犯罪、メディア、若者、音楽、写真、女性、アダルトビデオ、漫画などについて縦横に論じ、「平成」という時代を裏側から考察する。衝撃の日本文化論。
目次
一九八九年論
もがく仕種の可愛さこそが―「不快の快」時代の魅力的な身振りだ
「死にたい」と「殺したい」のあいだ―「十七歳」の犯罪について
全体化の虚偽、現代的自殺―入間市「ネット心中」事件について
「稀薄」がキーワード 二十代はデュシャンの泉?
人界を穿つ闇―三角みづ紀『オウバアキル』書評
境界が溶けてゆく―太陽肛門スパパーン『馬と人間』について
一点に心を集めて小さくなってゆく―九〇年代後半のゆらゆら帝国について
ロボットと性
「小さな画面」の不如意を慈しむことについて
写真都市彷徨
世界は一人の女の集約される
ネット時代の書簡
ドキュメンタリーとしてのアダルト・ビデオ
境界突破した身体がそれじたい境界化する―あとがきにかえて
著者等紹介
阿部嘉昭[アベカショウ]
1958年、東京都に生まれる。慶應義塾大学法学部卒業。専攻、映画・サブカルチャー研究、詩歌論。現在、北海道大学大学院文学研究科准教授。2014年、詩集『ふる雪のむこう』(思潮社、2013年)で第四八回北海道新聞文学賞受賞。詩論集『換喩詩学』(思潮社、2014年)で第六回鮎川信夫賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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田中峰和
1
著者は1989年の4大事件を昭和天皇崩御、天安門事件、ベルリンの壁崩壊、宮崎勤事件とする。宮崎事件を軸に8後年の酒鬼薔薇事件、山陽道バスジャック事件を解説。犯行時の年齢は14歳、17歳と違うが同い年の二人。バスジャック犯は酒鬼薔薇に心酔傾向がありネット履歴と自供に残されている。理由はともあれ3人目の同年齢の加藤智大が秋葉原で大量殺人を犯した。酒鬼薔薇絡みの事件は跡を絶たない。昨年の佐世保女子高校生殺害犯も神戸事件の影響を匂わせる。今月発行された「絶歌」は遺族の承諾云々より影響を受ける異常者の出現が怖い。2015/06/24
MG
1
1989年論や執筆されたのが2000年代など、2010年代感のない評論集です。同時代性のない時代遅れの評論群という印象です。2015/05/22
hiratax
0
著者の文化批評にはいつもシビれる。思考が拡散しまくっているんだけど、それを強引に着陸させる力技がある。140字でなく、ひとつのテーマを1400字にも1万4千字にもしてしまう。敷衍ではなく、「抗うな 受け入れろ 全ては繋がっている」(ワールドイズマイン)だ。寝ないで武蔵野美大「中村とうよう展」へ向かう途中で読んでいった。小川駅から歩いていったんだが、武蔵野の原野を歩いて、丸屋根の大学を目指す。「郊外」も阿部評論を貫くキーだ。武蔵野美大に最後に来たのは9年前の学祭でノイズを聴きに来たのだなと思い出す。2015/06/11