内容説明
ジャーナリスト、編集者でもある言語学者が、北米産ミステリーと60年代南米小説の実験精神を融合させた驚異のデビュー作!
著者等紹介
ファベロン=パトリアウ,グスタボ[ファベロンパトリアウ,グスタボ] [Faver´on Patriau,Gustavo]
1966年、ペルーのリマに生まれる。作家、文芸批評家、ジャーナリスト。現在、ボードウィン大学准教授
高野雅司[タカノマサシ]
1976年、埼玉県に生まれる。神戸市外国語大学大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。現在、神戸市外国語大学非常勤講師。専攻、ラテンアメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
50
幻想文学と推理小説の幸福な結婚。古書収集家である友人が婚約者を殺した真相を探るというストーリーだけを見れば立派な推理小説なんだけど、その捜査過程に散りばめられたエピソードはまごう事なきラテンアメリカ文学。主人公の行く先だけではなく、友人との会話からも常に薄気味の悪い悪夢の中を彷徨っている感覚を受ける。一応物語は論理的に片付くようになっているのだが、その論理が内包するものも狂っているような気が……。何となく舞台とそこのエピソードからはドグラマグラ、ラストシーンでは京極の某作品を連想させられてしまった。2015/03/20
pyoko45
14
友人の古書収集家が妻を殺害した事件を探る心理言語学者の語りに、奇怪な挿話が意味ありげに混入する。事件の真相=実際に起こったことは意外な形でそれなりに明らかにされるものの、事件当事者たちの心の闇はやみのまま。殺人事件の真相を追うという筋書きと全編を覆う陰鬱な雰囲気は、サバト『英雄たちと墓』を思い浮かべたけど、それよりかは濃厚さ、ディープさは控えめながら、狂気、異形、暴力、迷宮、といったラテアメ文学のダークサイドなテーマがきっちりとつまった佳品。2015/01/25
きゅー
13
この物語では光と闇、生と死など、あらゆるものの二面性に焦点が当てられている。登場人物たちは一対であるはずのものが断絶していることにより悲惨な境遇に落ち込んでいる。ボルヘス、エーコに影響を受けているであろう物語は、図書館=修道院=病院という閉鎖された空間において、人間の病と悪を現出させる。ペルーで起きた実際の事件、内戦など、暴力と貧困の記憶が加わり、なお一層闇は深めるばかりだ。狂気が世界を領する、そして、狂気は炎を吹き上げる。二つのものが一つになるには、白熱のなかで溶けて一体になるしかないのかもしれない。2015/04/24
syachi
5
ドグラ・マグラと似ているというか、誰も真実を素直に話していないだけではなく、よくわからないところへ誘導しまくりな感じ。2015/04/08
dilettante_k
5
原著10年。若くして古書趣味が高じ、収集家たちと「組織」と呼ぶ古書肆を立ち上げたダニエル。かつての親友である心理言語学者の「私」に連絡を付けたとき、彼は婚約者惨殺の咎で精神病院に収容されていた。面会を繰り返し、ダニエルの動機を見出すべく、語り手が奇矯な収集家仲間や彼との思い出を辿るなか、再び殺人が起きる。語り手の探索行と精神病院での幻覚的な会話が交互にパターン化され、そこに突飛な挿話を差し挟むことで狂気との境目が撹拌されていく。推理物の体裁を取りながら、暴力と狂気、言語と書物の迷宮に惑う南米発問題作。2015/01/03