内容説明
観る者の予断を翻弄し続ける特異な作品群によって世界の映画シーンを震撼させてきた奇才・黒沢清。彼が思考する“ホラー映画”、ひいては“映画”というメディアそれ自体のリミットはいかにして作品に刻み込まれているのか。『CURE』以降の6つの作品を解体・再構築しながら、断絶と接続の二重性=“断続”というキーワードによって、映画創作の核心に迫る、初の本格的黒沢清論。
目次
二重性の二重化
第1部 “関係”の重層―『CURE』をめぐって(媒介者の肖像―『CURE』の系譜;「断続」をめぐる闘争―「関係」の映画としての『CURE』)
第2部 “非‐人間”と“断言”の未来―ホラーのリミット(「決定」をやりなおす―『回路』の壁の染み;根拠なき分身―『降霊』から『ドッペルゲンガー』へ)
第3部 “過去”の明滅―出会いの準備(事後の光―『LOFT』と「過去」の問題系;記憶喪失者のフラッシュバック―『叫』における「出会い」と「断続」)
「戦い」をはじめなおすために
著者等紹介
川崎公平[カワサキコウヘイ]
1979年、北海道に生まれる。北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了。現在、北海道大学大学院文学研究科専門研究員、明治学院大学非常勤講師。専攻、映像論、日本映画論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
16
実に骨の太い一冊だ。私自身黒沢清ファンとしての自覚はあるが、ここまで細かく映画について「見る」こと、そして語ることを行ったその労力は大したものだと唸らされる。博士論文をベースにしているだけあって読み応えはたっぷり。ただ、第一章は要らなかったのでは? あくまでフィルムの中に留まり続けて構造やショットの意味合いを読み続けて欲しかった……そのあたり蛇足という感もある。だが、この本を避けて黒沢清氏は語れないだろうことは確かに分かる一冊だ。私自身何処まで読めているのか自信はない。また『叫』を観直すことから始めようか2018/04/01