出版社内容情報
長篇でさえ「化かされた」私を、短篇はより激しく混乱させた。時には書いてあることの意味さえ見失うような事態にもなったし、それがとんでもなくスリリングでもあった。(いとうせいこう「解説」より)
小島信夫の全短篇を網羅するシリーズ、第5回配本。
饒舌な語り手の独り語り、書簡体小説、エッセイ的・自伝的な要素を多分にふくむ小説など、著者の模索と挑戦が読者を挑発する。
妻の入院・手術を滑稽かつ哀切に描き、『抱擁家族』のサイドストーリーとも言える「眼」、郷里への回想のうちにそこに息づく人々の本質を描き、小島文学読解のための重要な鍵を秘める「郷里の言葉」、小説とエッセイの境を曖昧化させる著者の晩年の作風を先取りする「花・蝶・犬・人」などの他、単行本未収録作品「幽霊」「友情」「花・蝶・鳥・犬」をふくむ、全22篇(1962〜1970)を収録。
目次
女
感情旅行
ある作家の手記
棲処
冷たい風
季節の恋
家の誘惑
洪水
小さな歴史
船の上
カフス・ボタン
或る一日
ガリレオの胸像
雨を降らせる
靴の話
夫のいない部屋
四十代
弱い結婚(1962年版)
鷹
弱い結婚(1968年版)
解題 柿谷浩一
おびやかすもの 平田俊子
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