出版社内容情報
『AI時代の人的資本経営 従業員価値向上のためのこれからの人材戦略』は、日本企業の経営者や役員、人事部門・経営企画部門の実務家に向け、AI進化の波を踏まえた新しい人的資本経営の全体像を提示する書である。
第1章では、日本の「失われた30年」を背景に、人的資本経営が台頭してきた経緯を整理する。従業員を「資源」から「資本」へと位置づけ直すことで日本の人材マネジメントに変革をもたらした功績を評価しつつ、なお構造的課題を抱えている現実を明らかにする。そして、企業の価値向上と従業員の価値向上をいかに融合させるかが、今後の人的資本経営の核心課題であると論じる。
第2章では人口減少やスキルギャップによって人材がレアアースのごとく希少資源化する現状を描きつつ、未だに人材を軽視する風潮を批判する。多様性から個別性へと舵を切る組織戦略の重要性を示し、社員一人ひとりの特性を企業資本に転換する視座を提示する。
第3章では生成AIを含むAIの進化が能力観を変容させ、知識やスキルよりも活用力が価値を持つ時代へのシフトを論じる。AIによるスキルマップ生成や評価の精緻化を取り上げつつも、バイアス排除や人間的洞察を担うHI(Human Intelligence)の不可欠性を指摘する。
第4章は、人的資本経営が感情や価値観を捉えきれていない点を批判し、HIの再定義を行う。VUCAとAI時代においては、従業員の主体的な学びやフラットな組織構造がHI発揮の条件となることを明らかにする。
第5章ではAIとHIの協働によるタレントマネジメント革新を描く。メタバース型サクセッション、タスク型へのシフト、新しい採用戦略、さらにはソーシャルキャピタル革新まで、次世代型HRMの姿を展望する。
第6章ではAIが人事機能そのものを変革する未来像を示す。AIエージェントが人事部の一員として機能する中、人事は事業部門と従業員双方に寄り添う存在へと進化する。定型的な運用から脱し、EQを駆使した個別対応がHRプロフェッショナルに求められる。
第7章と終章は、AI時代を生き抜くビジネス・パーソンへのメッセージである。AIを使いこなし、人間らしさを磨き、キャリアを自律的に設計することが、企業だけでなく個人にとっての生存戦略となる。本書はAIの進展と人間性の再定義を架橋し、未来の人的資本経営の方向性を指し示すものである。
【目次】
第1章 人的資本経営の功績と課題
1-1 「失われた30年」と人的資本経営の台頭
1-2 人的資本経営が変えた日本の人材マネジメント
1-3 人的資本経営の構造的課題
1-4 見直しの視点 「企業の価値向上」と「従業員の価値向上」の融合
第2章 これからの人的資本戦略 - 人材はレアアースである
2-1 人口減少とスキルギャップが生む人材希少化
2-2 そうは言っても軽んじられている人材
2-3 求められるスキル・マインドの変化
2-4 多様性から個別性の時代へ
第3章 AI進化が変える人的資本経営の前提
3-1 AI・生成AIの進化がもたらす能力観の変化
3-2 人的資本の定量化とAIの補完
3-3 公平かつ精緻な人材評価への進化
3-4 AI時代における人材価値
第4章 「人間らしさ」を取り戻すHIの再定義
4-1 感情・価値観を見落とした人的資本経営
4-2 なぜ今HIが求められるのか
4-3 従業員のHIを開放する組織の在り方
第5章 AI×HIの協働によるHRM変革
5-1 AI×HIの次世代型タレントマネジメント
5-2 メタバース型サクセッション
5-3 ジョブ型からタスク型へ
5-4 シン・採用ストラテジー
5-5 ソーシャルキャピタル革新
第6章 AI時代の人事機能革新とHRプロフェッショナルの役割
6-1 AIで変わる人事部のミッション
6-2 事業に寄り添う
6-3 個に寄り添う
第7章 未来をつくる - ビジネス・パーソンとしての変革
7-1 AI時代を生き抜く術① AIを使いこなす
7-2 AI時代を生き抜く術② 人間らしさを磨く
7-3 AI時代を生き抜く術③ キャリアを自律的に設計する
終 章 AIの変遷と今後の展望
AIの変遷と現在の到達点、そしてこれからのカタチ



