出版社内容情報
いま最も表現が微妙になっているのは人体破壊をはじめとする残酷描写だった!レイティング、自主規制・・・日本映画界のタブーに切り込む迫力の1冊!
内容説明
手が!首が!情容赦なく斬り飛ばされるショック!日本では15歳以上でないと観ることは不可!映画業界に潜む忖度と自主規制!気鋭のライターが迫る血まみれの真相!
目次
第1章 失われた残酷(古の残酷;殉教者は無惨に殺される ほか)
第2章 映画の残酷描写に手が加えられている(咲き乱れるピンクの花『ソウ ザ・ファイナル』;愛と涙で画面がぼやけたリメイク版『マニアック』 ほか)
第3章 日本問題映画と検閲の歴史(ギロチン処刑が日本初の問題映画;『ジゴマ』騒動と検閲の強化 ほか)
第4章 地獄のビデオ・ナスティ 世界最悪の検閲(イギリス、キレる。;『悪魔のいけにえ』が暴動を引き起こす ほか)
第5章 It’s(not)Only a Movie(過激な描写に意見する必要性;レイティング ほか)
著者等紹介
ナマニク[ナマニク]
1974年生まれ。ライター。ホラー映画研究家。個人著書『Filthy』を刊行。2011年シッチェス映画祭に出品された、あるスペイン映画に出演もしている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
64
最初に言っておくと私はあらゆる規制に反対である。残酷映画と表現規制を扱った一冊。と同時に残酷映画紹介にもなってるし、残酷映画が何故面白いのかという意思表明にもなっている。日本の表現規制の現状から歴史、イギリスの規制について詳しく書かれている。日本にしても海外にしても、規制を決めるのは明確な規定ではなく空気という事にぞっとさせられる。一部の人間の主観によって見ていいものと悪いものが決められる恐怖、これ残酷表現より余程恐ろしいものではなかろうか。自分にできる抵抗は『ムカデ人間』借りる事くらいからかなあ。2017/05/31
アナクマ
12
残酷映画の存在意義を問いなおすことが本書の目的、とあるけど、ページの大半が残酷表現の規制事情にあてられていて、ちょっと肩すかし。聖書や名画を引き合いに出しての残酷肯定は良い。しかし、貴方なりの結論を出していただきたいという前に「ギョッとしたい。それをもっと味わいたい」という著者自身の「残酷が引き出す感情」をグツグツと煮込んで熱々のまま差し出してほしかった。面白いから、で終わりじゃ一冊にならないしなぁ。巻末の数ページにそれが読めた気がしたので、次作に期待。 2017/06/19
∃.狂茶党
10
残酷表現についての突き詰めた話は、ちょっと触るだけで、メインは表現規制の話。 それはつまり権力に都合のいい何か、上流階級の考え、保守的な良識、ってやつとの戦い。 だからこれは階級闘争だ。 作者は別に、お茶の間に残酷映像を流せといってるわけではなく、ゾーニングして、無修正が理想的と、穏健かつ現実的なな意見を述べてるに過ぎない。 これは表現の自由をめぐる議論の一環。 1番の問題は規制があることよりも非常に恣意的な規制の運用だろう。2023/03/10
vaudou
9
第一章より『ポルノを見たときのような劣情を感じつつも抗えない何か。それが残酷の魅力なのだ。満たされた人生ならば、劣情を満たし、退廃的なものを愛でる必要はないのかもしれない。だが満たされた人生を送れる人など、どれほどいるというのか。満たされない人生にとって、残虐とは郷愁であり救いなのだ。生命の誕生がセクシュアルなポルノであるならば、生命の終わりは残酷なポルノなのだ』2017/05/17
JunTHR
5
素晴らしい!主には、映画の残酷表現に対する規制の歴史で、ある種の残酷映画史であり、同時に残酷表現がなぜ「面白い」のかという主題にもなっている。膨大な作品の固有名の氾濫はほとんど残酷映画のガイドブックのよう。壮大な射程ゆえ駆け足で語られるエピソードは知らないことばかりで、より深く知りたいと思わせるものも多い。 「憤怒」が基底にあるが、正しい知識と論証によって、思考停止じみた規制や批判には冷静に抵抗するナマニクさんの姿勢に、末端ホラーファンとしても全力支援をしなければとアジテートされる気分で読み終える。2017/05/14