内容説明
『武功夜話』は、江戸時代まで遡る可能性があるから「偽書」でないという意見がある。しかし、「偽書」とはその史料の成立年代だけが問題なのではない。資・史料の作成者の名義を偽るという重要な要素がある。『武功夜話』はその点に疑いがあるのだ。本書が新版で刊行される意義のひとつは、そもそも「偽書」とは何かという根本的な問いを含んでいる。
目次
序 戦国文書『武功夜話』とはどんな史料なのか?
偽書研究1 「武功夜話」はどのようにして作られたのか?
偽書研究2 一級史料『信長公記』と偽書『武功夜話』を比較する
偽書研究3 捏造された秀吉の出世譚「墨俣一夜城」
偽書研究4 偽書を喧伝したマスコミ、有名作家、研究者の責任
偽書研究5 『武功夜話』がねじ曲げた戦国合戦史
著者等紹介
藤本正行[フジモトマサユキ]
1948年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部史学科卒業。現在、國學院大學兼任講師。日本軍事史・風俗史専攻
鈴木眞哉[スズキマサヤ]
1936年横浜市生まれ。中央大学法学部卒業。旧防衛庁、神奈川県庁等に勤務。戦国史研究家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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A.Sakurai
3
「東日流外三郡誌」は最初から偽史という認識だったので興味が無かったのだが,「武功夜話」が偽書だとしたら興味津々だ.生駒屋敷の描写は小説やドラマで盛んに見聞きしていたし,それが近年になって発見された「武功夜話」に基づくということは聞きかじっていたからだ.本書では「武功夜話」を含む前野文書の内容をチェックし,矛盾や間違いや用語の時代のズレがあまりに多いので史料価値なしと判定している.そもそも原本が公開されておらず調査もほとんどされていないというのでは学術的に取り上げにくいだろう.2015/09/09
ちび独
2
これだけあやしい本を元にNHKも NTVも番組を作ったということが、驚き。(どんな番組かは見ていないけど)たぶん、当事この手の疑惑を警告する本がなかったんだろうね。専門家はこんないかがわしい本を、はなから相手にしないし、当たり前過ぎて、偽書と声高に言うこともなかったんでしょう。この後にどこかで「武功夜話」が出てきたら要注目。2015/08/01
ぼいど
2
「批判本」なんで私の好み的には読後感がよくないですが、疑問を検証するとゆーのはよくできてると思います(何故か上からw)。「信長公記」を重視し過ぎなとこは感じますが、それで「武功夜話」の疑惑がなくなるレベルじゃないしw 多分読後感が悪かった理由は「武功夜話」の存在そのものを批判してるように見えたことかなー。史料扱いが極めて危険、一級史料扱いした奴らはけしからん……とゆー主張はまぁいいけど、史料として書かれたのかも不明な「武功夜話」自体にそれ以上の罵声を浴びせる意味は感じないから(--;2014/06/26
Tadasu Nunotani
2
改版モノですが、昨今の偽装事件を思えば真実を見抜く力を養い続けないと猛省しました…2014/04/21
フランソワーズ
0
『武功夜話』に対する重箱の隅をつつくような批判の数々。でもこれだけたくさんの"隅"があるようでは、もはや器としての価値もないシロモノはないのではないかと。2015/07/04