出版社内容情報
打ち上げ花火を創った三代目玉屋市郎兵衛。浅間山噴火で両親を亡くすも、その豪火に魅入られた少年は被災後をなんとか生き延び、花火師となるべく江戸に出、花火屋の玉屋、鍵屋に奉公する。より綺麗な色と形の、より響く音の花火を創るため、江戸城にも届く三百尺の打ち上げ花火をあげるために男は、殺人、女犯、放火、店の乗っ取りと、悪の限りを尽くす。小嵐九八郎の幻の傑作、花火に命を賭けた男の悪たれ一代記がついに文庫化!
内容説明
老舗花火屋・鍵屋の手代として働く新八は、一世一代の悪計によって、犠牲は大きかったが、二大花火屋の一角、三代目玉屋市郎兵衛の座を手に入れる。独り立ちした市郎兵衛は、理想の花火創りに邁進する。より綺麗な色と形の、より響く音の、そして江戸城をも超える高さの打ち上げ花火をあげるために男は、殺人、放け火、店の乗っ取りと、悪の限りを尽くす。小嵐九八郎の大傑作『悪たれの華』が『この時代小説がすごい!』でついに文庫化!
著者等紹介
小嵐九八郎[コアラシクハチロウ]
1944年、秋田県生まれ。早稲田大学卒。『鉄塔の泣く街』『清十郎』『おらホの選挙』「風が呼んでる」がそれぞれ直木賞候補となる。1995年、『刑務所ものがたり』で吉川英治文学新人賞受賞。2010年、『真幸くあらば』が映画化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たんかともま
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前半に比べると落ち着いた、しかし、熱は一向に去りはしない男の地の文になった。一人の男の一生を追う物語であり、一瞬の美を描いた物語ではない。一瞬の美を追う、丁寧に、長さを持って、汚い部分や、スケベな部分も描いて。それが、この物語なのであろう。たっぷり主人公の一生を追わせたあとで、クライマックスの花火はなかなかに力強い。空に上がる前に女のように鳴く花火。やはり、この作品は女と花火を少し重ねているのかもしれないと感じた。線香花火と人生を重ねる台詞もあるが、それだけでなく、あらゆるものを花火と重ねているのだろう。2019/09/28