内容説明
つながっているのに寂しい、「常時接続の世界」を生き抜くために。哲学という「未知の大地」をめぐる冒険を、ここから始めよう。
目次
第1章 迷うためのフィールドガイド、あるいはゾンビ映画で死なない生き方
第2章 自分の頭で考えないための哲学―天才たちの問題解決を踏まえて考える力
第3章 常時接続で失われた〈孤独〉―スマホ時代の哲学
第4章 孤独と趣味のつくりかた―ネガティヴ・ケイパビリティがもたらす対話
第5章 ハイテンションと多忙で退屈を忘れようとする社会
第6章 快楽的なダルさの裂け目から見える退屈は、自分を変えるシグナル
著者等紹介
谷川嘉浩[タニガワヨシヒロ]
1990年生まれ。哲学者。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。現在、京都市立芸術大学美術学部デザイン科講師。哲学者ではあるが、メディア論や社会学といった他分野の研究やデザインの実技教育に携わるだけでなく、企業との協働も度々行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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踊る猫
30
ネットの狂騒に呑み込まれて自分自身をなくしてしまう快楽、というのがあると思う。そこから一歩、いや半歩身を離しつつしかし自分だけの世界に閉じこもって孤立してしまうのでもなく、ネットの中で自分と世界のあいだに補助線を引き、世界としなやかに対峙すること。そんな難題に実にかろやかに挑んだ1冊として、ぼくはこの本を興味深く読んだ。いまを生きるポップカルチャーをふまえた実践的なアドバイスもたくさん載っており、したがって有効性は抜群と見る。この本を通して読み進めることがそのまま哲学の稀有なレッスンとなっているのがニクい2025/06/28
家出猫
14
実は、ほんの数年前までスマホを持っていませんでした。メッセージアプリ等のSNSもせず、情報化社会を後ろ歩きしているようなところがあったのです。しかし、今では自身も、本著で言うところの「常時接続」が当たり前の日々を送っています。かつて必要に感じていなかった頃、孤立していたかというとそうでもなく、孤独であることに対して、オープンマインドだったと思います。哲学するとはプラトンに始まる一連の会話に参加すること、だそう。著者が、わかりやすい言葉と私の理解を支える伴走をしてくれたおかげで、「考える海」に浸れました。2025/08/10
Matoka
11
哲学の素養がゼロなので多分半分も理解できてないかも…ものすごく噛み砕いてわかりやすく書いてくれているのだろうけども。常時接続の世界における「注意の分散」や、スマホが増幅させる『寂しさ」に抵抗し、精神の自由を確保するにはとうすれば良いのかを考えた本。「何かを作る、何かを育てる」という趣味を持つこと、自己と対話しつつも自己完結とならないこと。うーむ、「哲学とはそもそも何なのか」から始めないとダメかもしれない。もっと色々読んだあとにまたこの本に戻ってきたい。2025/07/14
播州(markⅡ)
11
ゾンビ映画で死なない方法は笑っちゃう。謙虚でいようと思っている段階で謙虚ではないのだろうが、本当の謙虚な人以外はそう意識しなければ傲慢さがにじみ出てしまう。非常にもやもやしちゃう!哲学書を読んでいるときに難しく感じるのは、同じ言葉を使っていると思っていても、自分の中の文脈と著者の文脈が違ってしまっているからなのだということが知れたことが大きな学び。そりゃあ誤謬がでてくるよね。ビジネス書もそうだけれど、哲学書も意外と実践しなければ意味がないの…と、いうか本の感想を描くのがすでに自己との対話なのかもしれない。2025/06/26
しゅー
11
★★★読んだことのない著者、さらに狙ったようなタイトルだったから、図書館本で済ませてしまった。しかし読み終わって「もし買っていても十分に満足だったな」と思った。哲学の入門書は、①やたらと「自分の頭で考える」を推して「何でもあり」に結論を持っていくタイプ②難解さを前面に出して著者を権威付けするタイプ③徹底的に現在の文脈に引き寄せてしまうタイプが多い。本書はメタな視点から哲学とは何かを読者に理解させた上で、現代的な問いに向き合う著者の思考を紹介してくれる。理論と実践のバランスが非常に良い入門書ではなかろうか。2025/06/25