内容説明
つながっているのに寂しい、「常時接続の世界」を生き抜くために。哲学という「未知の大地」をめぐる冒険を、ここから始めよう。
目次
第1章 迷うためのフィールドガイド、あるいはゾンビ映画で死なない生き方
第2章 自分の頭で考えないための哲学―天才たちの問題解決を踏まえて考える力
第3章 常時接続で失われた〈孤独〉―スマホ時代の哲学
第4章 孤独と趣味のつくりかた―ネガティヴ・ケイパビリティがもたらす対話
第5章 ハイテンションと多忙で退屈を忘れようとする社会
第6章 快楽的なダルさの裂け目から見える退屈は、自分を変えるシグナル
著者等紹介
谷川嘉浩[タニガワヨシヒロ]
1990年生まれ。哲学者。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。現在、京都市立芸術大学美術学部デザイン科講師。哲学者ではあるが、メディア論や社会学といった他分野の研究やデザインの実技教育に携わるだけでなく、企業との協働も度々行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
87
スマホは生活に必需品となったが、常時側にあることによる弊害には中々気付かない。本書は、そんな現代に孤独の価値を説く。哲学とは世界や自分を捉える理論だが、デカルトやニーチェを持ち出されても、西洋哲学とはプラトンに対する一連の注釈から始まると言われる様に日本人である私にはピンと来ないもの。著者は、映画「ドライブ・マイ・カー」や「燃えよ、ドラゴン」「新世紀エヴァンゲリオン」などからの引用で、哲学用語をなるべく用いずに、読者を導いてくれます。「他者の抱く疑問について一緒に考えてみる」という視点が新鮮でした。2025/09/28
踊る猫
32
ネットの狂騒に呑み込まれて自分自身をなくしてしまう快楽、というのがあると思う。そこから一歩、いや半歩身を離しつつしかし自分だけの世界に閉じこもって孤立してしまうのでもなく、ネットの中で自分と世界のあいだに補助線を引き、世界としなやかに対峙すること。そんな難題に実にかろやかに挑んだ1冊として、ぼくはこの本を興味深く読んだ。いまを生きるポップカルチャーをふまえた実践的なアドバイスもたくさん載っており、したがって有効性は抜群と見る。この本を通して読み進めることがそのまま哲学の稀有なレッスンとなっているのがニクい2025/06/28
R
25
タイトルの通りながら、スマホがもたらしたというよりも、スマホの登場により哲学における孤独の概念の説明がつけやすくなったといった感じだった。孤独の必要性や、解決しないことによる成長みたいな効能めいたものを哲学が余白として提示しているそうで、昨今はそういう余白をスマホによって埋めてしまっているから内省や自己と向き合う力が訓練されづらいという指摘があってなるほどと思う。世代とか関係なく、風潮や流行として、なんでもさくさく白黒つける感じだが、近道をして大きなものを逃しているのかもと思った。2025/10/27
ウォーカー
21
常時接続の時代だからこそ「孤立」と「孤独」を特に大切にし、「モヤモヤ」や「消化しきれなさ」を抱えながらも冒険的な好奇心をもって試行錯誤し、他者性を取り込んだ自己対話を通じて「何かを作り、何かを育てる」こと(著者の言う「趣味」)が大切だと理解した。創作や育成といった創造的な活動が何を意味するのか、何かを知り続けようとすることの意味は何かを考えさせてくれる。スマホ時代に限らず良い生き方のヒントがちりばめられていると感じた。ブルース・リーや「エヴァ」の登場人物のセリフが深掘りされていくプロセスが面白かった。 2025/09/15
ムラサキ
18
スマホに時間を取られる…現代人みな経験している問題である。やめたくてもやめられない。アプリを消してもまたインストール。実は、これは人間の本来的な寂しさ、モヤモヤを埋める手段として、スマホが気晴らしの道具としてマッチしていたことによる当然の帰結だった。それを解決手段として、今回上げているのは、スマホよりも楽しい趣味を見つけること。特に、作る育てるの趣味を行うこと。その孤独な時間を通じて、自分との対話が可能になる。自分の中にある寂しさやモヤモヤに直接目を向ける事がむしろ心の安寧に繋がる。2025/10/07




