内容説明
世にも名高き隻眼流―将軍家指南役・柳生十兵衛三厳は、大僧正天海の依頼を受けて、信州“千吹藩”を訪れた。城下へ入る途次、彼は4名の武士の刃を全身に受けながら、彼らを撃退した女・沙也を目撃する。彼女は千吹藩に巣食う異国の魔性“血鬼”に血を吸われていたのだ。やがて十兵衛は絶世の美女ラミアなる血鬼が藩主・虚久を籠絡し、この藩のみか日本を、否、世界を魔性の支配下におこうと企んでいることを知る。月光の下で甦る死者たち。十兵衛の豪剣もラミアには通じない。彼とともに戦うのは城代家老・早船主水とその一党、主水の娘・多恵、長崎からラミアを追って来たという切支丹・益田四郎のみ。そして、宮本武蔵。だが、この大剣豪はラミアの口づけを受けて血鬼と化し、十兵衛との戦いを挑む。十兵衛も血鬼とした上で。万事窮すと思われたとき、とおに急逝したはずの弟、刑部少輔友矩が救援に駆けつける!風雲急を告げる信州の一藩で、人間・十兵衛の剣は魔性ラミアと血鬼・武蔵を斃せるのか?著者久々の吸血鬼ロマンにして時代小説の本道―ここに成る。
著者等紹介
菊地秀行[キクチヒデユキ]
1982年『魔界都市“新宿”』(朝日ソノラマ)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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海猫
113
菊地秀行の実績や力量がよく出た作品。剣豪小説、伝奇ロマン、ホラー。どの要素も上質でしかも見事に融合。題材は詰め込んであるのに、簡潔な語りでコンパクトにまとまっている点も大いに買い。作中、漂う殺気が素晴らしい。すべての描写が堂に入ってますなー。ラストが投げっぱなしではなく、きっちり決着がつくので大いに満足。なので、これ一冊で納得の内容であるがあとがきによると著者は続編書く気満々。続きが出たらきっと読みます。2016/06/21
ettyan えっちゃん
5
菊池秀行先生だから,吸血鬼の書き方は心配ないのです。というのも,最近の吸血鬼ものを読んでいると,やたら無敵だったり,強すぎたりするからです。光に弱い,神仏に弱い。実は欲望に弱い。でも,力は強い。このあたりの強弱の付け方が吸血鬼の魅力だと思うので。このあたりをしっかりとオーソドックスに押さえた上で,柳生十兵衛と宮本武蔵と益田四郎が出てくればもう,言うことないのです。一気に読み終えました。楽しかった。願わくば,続編もあるといいなあ。あのお方やあのお方も出てくるといいなあ。女性だとちょっと物足りないので。2016/06/05
紫
2
吸血鬼×剣豪! 吸血鬼退治のヒーロー役は柳生十兵衛。いろいろあって吸血鬼と化した宮本武蔵と対決することに。というあらすじから、すわ、菊地秀行版『魔界転生』か!? と期待も大きく読んでみたのですが……うーん、剣豪モノとしても吸血鬼モノとしてもいまひとつといおうか、何ともちぐはぐで食い合わせが悪い印象。全体に薄いといおうか、淡泊といいましょうか、盛り上がりを欠くんであります。吸血美女ラミアも小物っぽくて残念。美形キャラだと友矩とかぶってしまうせいか、珍しく三枚目な役まわりの益田四郎が意外なおいしさ。星3つ。2016/11/17
きゃめる
2
吸血鬼vs柳生十兵衛&益田四郎(!)てだけでもお腹いっぱいなのに、加えてあの剣豪まで参戦させるサービス過剰っぷりが如何にも作者らしいw 登場キャラに手垢がつきすぎていて意外性に欠けるのが難と言えば難ではあるが、その分安定感はあるとも言える。時代伝奇好きなら、読んで損はないかと2016/06/05
辺野錠
1
柳生十兵衛&天草四郎VS吸血鬼のバトルが手堅くまとめられているという印象(手堅過ぎるという気はしてしまった)。天草四郎がヴァンパイアハンターで短期間で何人も仲間を集めることが出来るほどカリスマ性があるという設定は面白いと思った。2017/12/03