感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
すみけん
14
道徳が教科として扱われることに、大いに違和感を感じてます。文科省の方々は、この本を熟読した上で、教科化、そして学習指導要領の内容を決めてもらいたかった。道徳観や倫理観は、強制されて育まれるのではなく、自ら考え、経験することで、周りとともに育まれるものだと思う。学校の先生方、大変でしょうが、この本読んで、真の道徳観を子供たちとともに育んでいってください。2019/08/13
或ジャーノン
12
1990年代に小学生だった自分の世代は「道徳」とは“こうあるべき”を教わる時間であったように思います。本書では、かつての道徳は絶対に正しい価値ではなく、ある限定された“習俗の価値”であることを強調し、これからの道徳がどうあるべきかを解説されています。与えられる道徳から、自分たちで投げかけて共に作っていく市民教育へ。自分の子世代では、教育制度が変わっていることを期待したい。2019/12/26
spatz
10
表紙やタイトルからの自分の想像を遥かに超えた深い本だった。少しずつ読んだので読み終わるまでに時間がかかったが、その間に、寡聞にして存じ上げなかった著者の名前をいろんなところで名にし、教育学者にして哲学者で、さらにまだお若い世代の学者さんだということに驚いた。老成した哲学者のような印象を読んでいて受けていたので。 タイトルは挑戦的だが著者は哲学者で、考えは哲学の深い知識と現場をみていること双方に裏打ちされている。学校での道徳教育をどう扱うか、ということを表面的な技術的なことだけでなく丁寧に掘り下げられている2022/05/10
ta_chanko
8
誰のための、何のための教育・道徳なのか。この前提を深く考えることが大切。学校・大人・国家・企業のための教育・道徳ではなく、子どもたちのための、より良い社会を築いていくための教育でなければならない。キーワードは「自由の相互承認」・「シチズンシップ教育」。上からの押し付けではなく、自分たちで考え、ルールをつくり、それを運用・調整していく。こういう能力の涵養が必要。2019/10/02
かずぼん
7
道徳の教科化、主体的・対話的・深い学びなど世の中は学習指導要領の変化に過剰なまでに反応している。しかし、学校での実態はどうか。うさんくさい道徳の授業、わかりきったお題目を唱えたらおしまいという授業は、道徳だけに限ったものではない。国語の文学の読みもそれに通じるところがある。それを根本から考え直すために、苫野氏の主張は示唆に富む。表題は道徳であるが、前述の通り(著者は触れてはいないが)国語の授業における学びの個別化、協同化、プロジェクト化という主張がそのまま応用できると考える。隣接領域からの学びは大きい。2019/08/29