内容説明
言語が統制され、戦時体制が国全体を覆うとき、前線で、銃後で、彼らは何をどう詠んだのか。時代の重圧が表現者たちに与えた影響を克明に辿る、初めての包括的研究。
目次
第1部 (山口誓子―モダニズムから自己凝視へ;日野草城―モダニズム・戦火想望俳句の限界;中村草田男―屈せざる者の強さと弱さ;加藤楸邨―荒野・死を見つめるこころ)
第2部 戦前・戦中の俳句入門書を読む(内藤鳴雪;高浜虚子;沼波瓊音;大須賀乙字;嶋田青峰 ほか)
著者等紹介
樽見博[タルミヒロシ]
昭和29年、茨城県生まれ。法政大学法学部政治学科卒業。昭和54年1月、日本古書通信社に入社、故八木福次郎の下で雑誌「日本古書通信」の編集に携わる。平成20年4月より編集長。俳句同人誌『鬣(たてがみ)』のエッセイ・評論部門同人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumicomachi
1
第1部では山口誓子、日野草城、中村草田男、加藤楸邨それぞれの戦時中の言説と作品を、第2部では30名に及ぶ俳人たちの戦前・戦中の俳句入門書を読み解く。俳句(史)について何も知らない私にもわかりやすく丁寧に書かれていて勉強になり、考えさせられた。また、資料である戦前戦中の本の書影も豊富に掲載されていて臨場感がある。「言語が統制され、戦時体制が国全体を覆うとき、前線で、銃後で、彼らは何をどう詠んだのか。時代の重圧が表現者たちに与えた影響を克明に辿る、初めての包括的研究。」(帯文)2014/06/27
Nick Carraway
0
誓子、草城、草田男、楸邨の俳句と戦争について、彼らの言動を資料から検討する。「戦争俳句」と一括りにはせず、一人一人に個別の人生があるように、一人一人に個別の戦争体験があることを前提とし、俳人たちの戦争責任を問う意図はなく、当時の資料を通しての検討を旨とする。公正な執筆態度と思う。筆者はその他、収集した多くの俳人の記した俳句入門書も検討の俎上に載せる。大部な著書ではあるが、概観書という感がある。今後、各俳人についての専門の研究者の、個別の深掘りを待ちたい。俳人と戦争の研究には欠かせない基礎文献であると思う。2025/05/22