内容説明
優れた経済人にして独創的な思想家、山片蟠桃は、大坂の蔵元として仙台藩の財政を支える一方、懐徳堂に学び、百科全書ともいうべき大著『夢の代』を著した。経済を論じ、鬼神、仏教を排し、古代神話を徹底批判、地動説に基づく天文学までをきわめた江戸の偉才の生涯。
目次
出立の時
懐徳堂の智
升屋騒動
梶木町界隈
定信登場
浪華の今孔明
難問山積
天と仏
仙台へ
宰我の償い
歴史批判
レザーノフ来航
経済論
儒の核心
無鬼論
大いなる晩年
著者等紹介
木村剛久[キムラゴウキュウ]
1948年、兵庫県高砂市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。75年、株式会社共同通信社に入社。2008年、退社。訳書・共訳書にケネス・ルオフ『国民の天皇』(大佛次郎論壇賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きいち
14
蟠桃のように生きたい、と強く思った。まさにこれは、理想の「社会人大学院生」じゃないか。懐徳堂の儒教の知を羅針盤に、地理や歴史から経済、天文、宇宙論と、世界全体を理解しようと生涯学び、書くことで統合を果たす。商売での実地経験がその軸になっているから、現実から遊離することがない。身分制の限界はそれはそれで前提として、そこでどう考えどう動くことでベターが実現できるかを考えていく。より高くとかより深くとか、そんな垂直の志向じゃなく、より広く、横へヨコへというアスピレーション。自分のロールモデルにしようと思う。2013/05/17
きさらぎ
4
経営者としての蟠桃と、思想家としての蟠桃。懐徳堂に学び、竹山・履軒を慕う蟠桃は、神・仏については徹底的に否定・批判したが、朱子(学)に対しては、鬼神論は批判したが理気論はそれなりに受容もし、特に儒の五倫五常はこれを奉じ、主家に対しては最後まで「忠」を尽くした。天下の経済の動きを見据え、様々な方策を立て実行したのも全て主家のためだった。その「忠」を幕府から褒賞されて喜ぶ晩年の蟠桃を描く著者の筆は優しい。軽快な筆にのせられて楽しく読んだが、その反面、もう少し蟠桃の「えぐみ」のようなものを感じたかった気もした。2015/12/27
メルセ・ひすい
4
江戸時代の独創的な思想書。①富永仲基の『出定後語』、三浦梅園の『三語』 そして本書蟠桃の『夢の代』その三書しかない。無鬼論が唯物論に基づく宗教批判゜の先駆けとして喧伝された時代もある。しかし、江戸時代でもあり封建的要素として、儒教道徳が随所にみられ、蟠桃の思想的限界になっている。優れた経済人にして独創的な思想家・山片蟠桃は、仙台藩の財政を支える一方、大著「 夢の代」を著した。経済を論じ、鬼神、仏教を排し、古代神話を徹底批判、地動説に基づく天文学までをきわめた江戸の偉才の生涯を描く。2013/04/16
pokke154
1
江戸時代に生きた庶民がどれだけ教養を大事にしていて、どれだけ励んでいたか…とても敵わないと思った。これだけの思想家がいて、これだけ近代的な数学、理科が広がっていたのにもびっくり。2017/07/04
よしゆき
0
5冊目。2017/01/27