出版社内容情報
東日本大震災の教訓を踏まえて創設された地区防災計画制度。この制度に基づく地区防災計画づくりを通じて、コミュニティの活動が活発になり、全国で社会変動が起きている。住民等を主体とした防災計画づくりの仕組みが、西日本豪雨、東日本台風、コロナ禍、能登半島地震等の大災害で多くの住民の命を救い、現在では1万を超えるコミュニティで住民による防災計画づくりが行われている。住民の自発的な合意形成と、学校、公民館、社会福祉協議会、女性会、地元企業、NPO等の多様な主体との連携を特徴とする計画づくりは、住民の命を救うだけでなく、地域活動の活発化によるソーシャル・キャピタルの醸成にもつながっている。
防災というと、敷居が高いとか、自分は関係ないと考えられがちであるため、コミュニティの日常生活に防災活動を埋め込んでいくことで、防災を強く意識しない形で取り組めるようにすることが重要である。伝統的な祭りには、実は普段意識されていない防災機能が埋め込まれている。例えば、福岡県の博多祇園山笠は、過去の洪水氾濫において祭りの最中に男衆が防災活動を実施した歴史があるし、秋田県のなまはげは、支援者となる若者が家々をまわり、祭りを通じて要支援者名簿を作成する仕組みを内包している。コミュニティの祭りに隠された防災機能は、祭りの組織や集団、それを支える制度、空間、道具等のほか、祭りの準備や実施のための年中行事が、平常時においても、発災時においても、災害後の復旧・復興期においても、密かに住民の活動の中に埋め込まれる形で防災機能を果たしている。祭りの他にも河川の清掃活動、ラジオ体操、運動会、福祉活動など多様な活動と連携した防災活動に注目したい。
本書は、災害の頻発化・激甚化やコロナ禍のような疫病への対応が求められ、住民の防災意識が高まっているなかで、災害という自然現象や発災後の社会だけを対象とするのではなく、住民の命や財産を守るため、災害発生前のコミュニティによる防災活動に注目した研究の成果である。災害と社会の関係を論じるに当たっては、行政的な施策が住民にどのように受け止められ、どのような効果を発揮しているのかについて検証することが欠かせないが、従来の社会学ではほとんど手が付けられてこなかった。そこで、行政によって導入された地区防災計画をテーマに、住民が主体となった計画づくりをはじめとするコミュニティ防災活動に注目し、その社会的影響を著者がコミュニティの地区防災計画づくりの現場で行ったインタビュー調査等によって収集したデータや、地区防災計画学会と連携して実施したオンラインアンケート調査のデータ等を利用して、質的分析と量的分析を統合した混合分析を行う。
【目次】
本書の背景
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制度・手法編
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第1章 本書の社会学的位置付け
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1 従来の研究成果の意義と視点
1.1 地域コミュニティに関する先行研究
1.2 地域社会学からのコミュニティ防災に関する研究
1.3 地区防災計画制度に関する先行研究
2 地区防災計画の社会哲学的含意
ワイズナーのモデルと防災のパラダイム転換論
3 本書の社会学的視角と社会学・地域社会学的な特色
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第2章 今、なぜ地区防災計画が必要なのか 東日本大震災の教訓から
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1 大規模広域災害時の地域コミュニティの共助の重要性
2 阪神・淡路大震災や東日本大震災での公助の限界と共助の重要性
3 災害対策基本法改正による地区防災計画制度の法制化
4 地区防災計画制度の特徴
5 脆弱性縮小のための地区防災計画
6 地区防災計画づくりの普及状況
7 地区防災計画が住民の命を守った事例
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第3章 本書の社会学的視角 データ収集・分析手法
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1 本書でのデータ収集・分析手法の特徴
2 データ収集方法
2.1 量的データ
2.2 質的データ
2.2.1 参与観察
2.2.2 半構造化面接法によるインタビュー調査
2.2.3 エスノグラフィ
2.2.4 現地調査主義
3 分析手法
3.1 グラウンデッド・セオリー・アプローチ
3.2 KJ法
3.3 SCAT(steps for coding and theorization)
4 質的データ分析とコード付け
5 頻出語分析・共起ネットワーク分析
6 実験的研究・量的研究と質的研究について
7 混合分析
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事例編
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第4章 南海トラフ地震とコミュニティ防災 高知県高知市下知地区の事例から
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1 先行研究、データ収集・分析手法等
2 下知地区の特徴と地区防災計画
2.1 下知地区の地域特性
2.2 下知地区減災連絡会の設立とモデル事業
3 高知市防災担当者に対するインタビュー調査
3.1 インタビュー調査の背景と手順
3.2 調査結果
4 結びにかえて
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第5章 熊本地震・九州北部豪雨を受けたコミュニティ防災
福岡県北九州市志井校区の事例から
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1 はじめに
2 先行研究と本章の位置付け
3 調査の方法
3.1 データ収集の方法
3.2 計量テキスト分析と質的データ分析
4 志井校区の地区防災計画づくりに関する分析結果
4.1 北九州市及び小倉南区志井校区の地域特性と地
内容説明
災害列島日本に生きる住民がつくる防災計画。東日本大震災後、全国1万以上のコミュニティで社会的弱者も巻き込み取り組まれているボトムアップ形式の地区防災計画。伝統的な祭りが持つ潜在的防災機能や、地域活動に埋め込まれた防災にも注目。防災士志望者も必読の書。
目次
制度・手法編(本書の社会学的位置付け;今、なぜ地区防災計画が必要なのか―東日本大震災の教訓から;本書の社会学的視角―データ収集・分析手法)
事例編(南海トラフ地震とコミュニティ防災―高知県高知市下知地区の事例から;熊本地震・九州北部豪雨を受けたコミュニティ防災―福岡県北九州市小倉南区志井校区の事例から;都市の祭りとコミュニティ防災―博多祇園山笠の事例から;アーバニズム下位文化理論とコミュニティ防災;コロナ禍とコミュニティ防災;能登半島地震とコミュニティ防災;祭りの潜在的防災機能)
著者等紹介
金思穎[キンシエイ]
専修大学人間科学部兼任講師(福岡大学非常勤講師)。専修大学博士(社会学)。日本学術振興会特別研究員(DC2)、専修大学社会知性開発研究センター客員研究員等を経て現職。地区防災計画学会奨励賞、論文賞を受賞。地区防災計画学会理事・青年部長。研究分野は災害社会学、都市社会学等(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。



