出版社内容情報
「野生のなかにこそ世界を保存する力がある」
ソローの野生論「ウォーキング」のもっとも知られた一節である。ソローの野生論は、野生という概念を中心として文化の活力と健全性、そして人間の全き成長について論じたものであった。従来、自然詩人、シンプルライフの実践家とみなされたソローを「野生」という鍵概念に注目して読み直し、さらに環境活動家ジョン・ミューア、現代詩人ゲーリー・スナイダーに与えた影響を考察する。
「わたくしが関心を抱くのは、思想(グラマー)としての「野生」の問題であり、その系譜学である。別の言い方をすれば、ソローは「野生」という概念のなかになにを見出し、どのような意味を読みこもうとしたのか。その思想の発端は何であったのか。またそれを生きた哲学としてどのように統合しようとしたのか。本書が追求するのは、そうした問いへの回答である」(本書「はしがき」より)
内容説明
なぜ現代に野生が必要なのか。『森の生活』の隠遁者ヘンリー・ソローが追究した「野生」の思想とは何か。アメリカ文学における野生の想像力の水脈をたどり、環境活動家ジョン・ミューア、現代詩人ゲーリー・スナイダーに与えた影響を考察する。第12回九州大学出版会・学術図書刊行助成対象作。
目次
第1章 野生の系譜学
第2章 野生児の帝国―「ウォーキング」再読
第3章 背後の自然―『ウォールデン』
第4章 詩人としての先住民―『コンコード川とメリマック川の一週間』
第5章 神話の森へ―『メインの森』
第6章 牧神の死
第7章 ウィルダネスという聖地―ジョン・ミューア
第8章 熊と結婚した女―ゲーリー・スナイダー
最終章 野生の文化論―「インディアン・ノートブックス」
著者等紹介
高橋勤[タカハシツトム]
1958年福岡県生まれ。ペンシルヴァニア州立大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。九州大学大学院言語文化研究院教授。アメリカ文学、環境文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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