内容説明
「近代教育学の祖」はいかにして誕生したのか。世界初の絵入り教科書『世界図絵』を著した17世紀チェコの思想家コメニウス。4世紀にわたる彼のイメージの生成を日欧の史料を駆使して描き出すメタヒストリーの試み。
目次
第1章 漆黒の一七世紀より―生ける印刷術(一七世紀の時代相をめぐって;光の思想家コメニウス ほか)
第2章 伏流する一八世紀―啓蒙主義の光と(啓蒙主義のコメニウス批判;避難所としてのドイツ ほか)
第3章 湧出する一九世紀―近代の光と(チェコ民族再生運動のなかで;「近代教育学の祖」の誕生 ほか)
第4章 眩惑する二〇世紀―イデオロギーの光と(二つの戦争の時代;東西冷戦のなかで ほか)
第5章 模索する二一世紀へ―思想史問題としてのコメニウス(冷戦終結と近代の再考;歴史記述をめぐる課題 ほか)
付録1 コメニウス研究ガイド
付録2 コメニウスゆかりの地
著者等紹介
相馬伸一[ソウマシンイチ]
1963年、札幌市生まれ。1994年、筑波大学大学院博士課程教育学研究科単位取得退学。2000年、博士(教育学)(筑波大学)。1994年~2018年、広島修道大学人文学部にて専任講師、助教授、教授。現在、佛教大学教育学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鵜殿篤
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【要約】コメニウスは、教員採用試験レベルでは『大教授学』や『世界図絵』のみに依拠して「近代教育学の祖」とされてきましたが、それは近代的な関心からコメニウスの実像の一部を都合良く切り取って歪めた語りに過ぎません。また近代批判の文脈に巻き込まれてコメニウスが非難されることもありますが、これも現代的な関心から実像の一部を恣意的に切り取ったものです。 コメニウスの語られ方を四世紀に渡って確認することで、教育と歴史が実践的な関心にどう応えるかという課題が浮き彫りになっていきます。2020/03/16