ブッククラブと民族主義

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  • サイズ A5判/ページ数 471p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784798502182
  • NDC分類 024.34
  • Cコード C3098

出版社内容情報

会員制の廉価書籍販売組織であるブッククラブは、ドイツにおいて1920年代から1980年代にかけて大きな発展を遂げ、本を買って読む習慣が社会の広い層に普及する読書の民主化に多大な貢献をなした。しかし一方で、民族主義的な思想の普及のために利用され、ドイツの右傾化とナチス政権の成立に大きく寄与した。

本書は、そのような二面性を有するドイツのブッククラブに関する、わが国初の本格的な論考である。第1部では、ドイツにおけるブッククラブの発展全体をテーマとし、第1章でワイマール共和国時代の隆昌、経済的・内容的特質、伝統的な書籍販売との葛藤を、第2章でドイツ連邦共和国における1960‾80年代の隆昌と、二段階販売システムや経営の多角化といった新たな展開を詳しく考察する。第2部ではドイツ家庭文庫とナチズムのかかわりに焦点をあて、第1章で母体をなすドイツ民族商業補助者連合の教育活動全体の民族主義的な傾向を跡づけ、第2章では、同文庫の主な作家・作品、本の提供方法と装丁、雑誌の役割、ナチス時代の活動を詳しく分析し、民族主義的な読書指導とナショナリズムの隆昌との関連を明らかにした上で、ナチス政権との親和性と軋轢を解明する。さらに、余論では、1945年以前のドイツのブッククラブ全52団体について、成立年、関連団体、思想傾向、本の提供方法、提供された本の特色などを詳しく解説する。

文学研究と書籍研究を架橋する意欲的試みであるとともに、ナチズム研究においても必読の書である。

目次
凡 例

序 章 本書のテーマと構成

  一 テーマと背景
  二 全体の構成
  三 ブッククラブの一般的特色

  第I部 ドイツにおけるブッククラブ

第一章 ドイツにおけるブッククラブの成立
       一九四五年までの発展

 第一節 ワイマール共和国時代の隆昌
  一 一九四五年以前のドイツにおけるブッククラブ
  二 経済的特質
  三 内容的特質
  四 購入義務と会員数
  五 伝統的な書籍販売に対する脅威
 第二節 ブッククラブと伝統的な書籍販売
  一 静観から危機感の高まりへ
  二 実質的長所と共存の可能性
  三 ネガティヴ・キャンペーンと株式取引業者組合の介入
  四 ボイコットと訴訟
  五 書籍販売のブッククラブ
  六 ナチス時代の統制と発展

第二章 ドイツ連邦共和国におけるブッククラブ
       一九四五年以後の展開

 第一節 一九六〇年代から一九八〇年代の隆昌
  一 一九四五年以後のドイツ連邦共和国におけるブッククラブ
  二 ブッククラブの提供図書
  三 同時代の評価
  四 伝統的な書籍販売との関係
 第二節 ベルテルスマン読書愛好会における二段階販売システム
  一 ベルテルスマン読書愛好会の設立
  二 二段階販売システムの成立
  三 伝統的な書籍販売との緊張の緩和
  四 宣伝・勧誘力の高まり
  五 利益の向上
  六 二段階販売システムの意義
 第三節 ベルテルスマン読書愛好会における経営の多角化
  一 経営の多角化の二つの方向性
  二 本と本以外の提供品の関係
  三 音楽部門の提供品の発展
  四 カタログにみる具体例
  五 ブッククラブ衰退の予兆

余 論 ブッククラブ総説
       一九四五年までの五二団体の活動

  一 先駆的ブッククラブ
  二 市民的な読者を持つブッククラブ
  三 特殊な読者を持つブッククラブ
  四 宗教的ブッククラブ
  五 保守的・国家主義的ブッククラブ
  六 左翼的労働者ブッククラブ
  七 書籍販売のブッククラブ

  第II部 ドイツ家庭文庫をめぐって

第一章 保守的労働組合と民族主義
      ドイツ民族商業補助者連合の教育活動

 第一節 教育活動の概要
  一 商業補助者と労働組合
  二 民族主義的特色と教育活動の分類
 第二節 職業教育
  一 ドイツにおける商業学校の発展
  二 商業教育全般
  三 語学教育
  四 商業関連の本と雑誌の刊行
 第三節 一般教育
  一 一般教育の概要
  二 講演活動
  三 スライドと映画
  四 社交の育成
  五 職業身分講習会
 第四節 青少年教育
  一 商業青少年教育と民族主義
  二 徒弟部門から商業青年同盟へ
  三 遍歴職人
  四 青年ドイツ同盟と若きドイツ人同盟への関与
  五 ナチズムへの接近
 第五節 フィヒテ協会と雑誌『ドイツ民族性』
  一 フィヒテ協会設立の経緯
  二 主な活動
  三 地方への広がりと発展
  四 雑誌『ドイツ民族性』の刊行
  五 保守革命的思想
  六 フィヒテ協会とナチズム

第二章 ドイツ家庭文庫と民族主義

 第一節 ドイツ家庭文庫について
  一 民族主義的読書指導のためのブッククラブ
  二 主な作家・作品に表れた民族主義的傾向
 第二節 本の提供方法と信念のきずな
  一 「主要シリーズ」の提供方法
  二 「贈り物」の提供方法
  三 「選択シリーズ」の提供方法
  四 本の提供方法と信念のきずなのかかわり
 第三節 本の装丁の重要性
  一 ドイツ家庭文庫における本の装丁の全般的特色と装飾的価値
  二 総クロース装と民族主義的世界観の結びつき
 第四節 雑誌の役割
  一 雑誌の変遷
  二 収録記事の概要
  三 民族主義的な戦いの手段
 第五節 ナチス時代の活動
  一 ドイツ民族商業補助者連合の解体とドイツ家庭文庫の存続
  二 『かまどの火』にみるナチス政権成立直後のドイツ家庭文庫
  三 第二次世界大戦勃発の影響

終 章 ブッククラブの社会的役割と民族主義

 補足資料 ドイツ家庭文庫の「主要シリーズ」一覧
 図版出典
 参考文献
 あとがき
 事項索引
 人名索引

著者紹介
竹岡健一(たけおか けんいち)
九州大学大学院文学研究科博士後期課程中退。
鹿児島大学法文学部教授。博士(文学)。専門はドイツ文学。

著訳書
『ルイーゼ・リンザーとナチズム  20世紀ドイツ文学の一側面』(関西学院大学出版会、2006年)
『ヘルマン・ヘッセ全集』(第6巻)共訳(臨川書店、2006年)
『ドイツ短編 1945-1968年 12の作品と解釈』(同学社、2008年)
『ヘルマン・ヘッセ エッセイ全集』(第8巻)共訳(臨川書店、2010年)など。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

BLACK無糖好き

13
ドイツで1920年代から1980年代にかけて発展をとげたブッククラブ(会員制の廉価書籍販売組織)に関する研究論文。ブッククラブと一般の書籍販売との関係も解説しながらブッククラブ発展の全体像を示している。数あるブッククラブの中で著者は、1916年に当時ドイツ最大の保守的商業職員労働組合の「ドイツ民族商業補助者連合」によって設立された〘ドイツ家庭文庫〙に焦点を当て、同団体による民族主義普及の為の活動、ナチスの政権獲得への対応やナチス政権下での宣伝媒体としての役割を詳説。◇この辺の研究は希少価値としては高そう。2018/04/02

スイ

6
小説以外はなかなか一気読みできないのだけど、これは一気読みだった。 ドイツのブッククラブの発展と役割、そして民族主義的なブッククラブの一つがナチズムを煽ることになっていく過程を非常に丁寧に論じている。 ブッククラブ=読書会かと思い主催者としてはドキッとしたのだけど、会員制で、伝統的な書籍販売で売られる書籍の「ライセンス版」やオリジナル書籍を安価で会員に提供する組織のこと。 文章が非常に明晰で、ドイツ語の訳も自然で大変読みやすい。 惹きつけられてぐいぐい読んだ。 教え導こう、という考えの危うさが身にしみる。2019/03/19

古本虫がさまよう

0
ブッククラブといえば、すぐに浮かぶのが英国のゴランツによる「レフトブッククラブ」だ。左派系統の本を定期的に刊行。その歴史や刊行書リストなどに関しては、ジョン・ルイスの『出版と読書 レフト・ブック・クラブの歴史』がある。ゴランツによって創設されたもの。数万人の会員を擁したこともあり、オーウェルの『ウィガン波止場への道』などを刊行(『動物農場』は断った)。そのドイツ版かなと思って手にした次第。 各種さまざまな「ブッククラブ」が並立する分には何の問題もあるまい。国家的運営で画一化され、唯一化されたら問題だが…。2018/04/01

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