出版社内容情報
事実か、創作か、文学かジャーナリズムか…。
日本の「ノンフィクション」は、昭和期、とりわけ戦後に隆盛を迎えた。そこにはいくつもの転換点となる、重要な作品が存在する。女性の発見ともいえる『女たちの二・二六事件』、スポーツノンフィクションの金字塔「江夏の21球」、戦前と現代との断絶を問い続ける『昭和16年の敗戦』、ジャーナルでは書かれない事件の裏に迫る『誘拐』など…。
戦後80年、昭和100年の今こそ、読みたい、読むべきノンフィクションの名作を深掘りする!
【はじめにより】
故きを温ねて新しきを知る――。これが本書の基本的なコンセプトである。昭和の名作はただ読んで終わるにはあまりにも惜しい。何度も読んだ後でも、なお新しい刺激を受けることがあるのだから。私も自身の原点であり、これからを模索するためにあらためて名作の読解を試みることにした。そう、新しい作品を生み出すために、である。
【目次より抜粋】
1 開高健『ずばり東京』
記録文学としてのルポルタージュ
2 本田靖春『誘拐』
社会部記者からノンフィクション作家へ
3 柳田邦男『マッハの恐怖』
読者の心の澱
4 澤地久枝『妻たちの二・二六事件』
「女性」の発見という先駆的視点
5 山際淳司「江夏の21球」
スポーツノンフィクションの分水嶺
6 後藤正治『スカウト』
淡々とした日常から本質を掬い上げる
7 猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』
事実への畏怖は……
8 沢木耕太郎『一瞬の夏』
方法の冒険を続ける作家
9 向田邦子「父の詫び状」
生活のリアリティが時代を超える
10 立花隆『田中角栄研究』と児玉隆也『淋しき越山会の女王』
理と情のノンフィクション
【著者略歴】
石戸 諭(いしど・さとる)
記者、ノンフィクションライター。1984年、東京都生まれ。立命館大学卒業。毎日新聞社、Buzz Feed Japanを経て独立。2020年、「ニューズウィーク日本版」の特集「百田尚樹現象」にて第26回「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象:愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)、『ニュースの未来』(光文社)、『東京ルポルタージュ』(毎日新聞出版)、『視えない線を歩く』(講談社)などがある。
【目次】