目次
第1章 グラスの縁に腰掛けているような人生
第2章 ぼくはアメリカ人をやめた
第3章 ぼくの中の日本人
第4章 対岸の火事
第5章 賢治の網
第6章 ぼくの中のアメリカ人
著者等紹介
パルバース,ロジャー[パルバース,ロジャー] [Pulvers,Roger]
作家、翻訳家、演出家、映画監督。東京工業大学名誉教授。1944年、ニューヨーク生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を卒業後、65年ハーバード大学大学院に入学。ロシア地域研究所で修士号を取得。ワルシャワ大学とパリ大学に留学後、67年に初来日。長編小説や戯曲、短編集、随筆集など多くの著作を出版、上演している。76年オーストラリア国籍取得
大沢章子[オオサワアキコ]
翻訳家。兵庫県出身。大阪大学人間科学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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trazom
86
昔、パルバースさんが宮沢賢治のことを「宮ざわざわ賢治」と形容しておられるのを読んで面白いと思った。様々な擬態語を駆使する賢治の文章をユーモアあふれて解説するこの人は只者ではない。東欧、西欧、日本、オーストラリアを転々とする中で、ベトナム戦争に象徴されるアメリカの偽善に嫌気がさしてアメリカ国籍を放棄したパルバースさん。国籍ではなく、人間の本質と向き合おうとする姿勢が、宮沢賢治や石川啄木の研究に繋がる。小津安二郎、ベアテ・シロタ、大島渚、井上ひさし、米原万里…パルバースさんが心を寄せる人たちの物語も魅力的だ。2021/03/04
R
31
ユダヤ系アメリカ人の著者が、日本で仕事をしつつ、オーストラリアに国籍を取って今に至るという半生を振り返った本でした。ある種哲学思想書のような面もあり、アメリカという国、そして、東西冷戦の影響色濃い時代を過ごしたこと、自身のルーツとの邂逅なんかも交えて、一人の人間としてどう生きようかという日々を積み重ねた内容だったように思う。現状のアメリカもそうだが、日本についてもある種の危機感を覚えているという警鐘もならしつつ、宮沢賢治が大好きという本だった。2021/05/31
ykshzk(虎猫図案房)
19
宮沢賢治や石川啄木の英訳で知られる元米国人の筆者は、米国人特有の独善性への違和感、ベトナム戦争への反抗等々から、祖国を離れ来日。その後米国籍を捨て、現在はオーストラリア人として生きている。Youtubeでも幾つか講演が聞けるが、もう日本人より日本人と言わせて頂きたい。自分は、自分が日本人として生きているという事について、真剣に考えてみたことがあるだろうか。「対岸の火事」というのは現代の世界には無い。皆同じ岸で生きているのだから。つまり、世界で起きることは繋がっているのだから。という内容が印象に残る。2022/11/08
マイケル
12
外側から見えてくるアメリカや日本、豪州。スパイ疑惑かけられ徴兵でベトナム戦争に行かされる前にアメリカ人をやめ日本とオーストラリアで暮らす。米軍に化学兵器使用されたベトナム戦争の戦争犯罪。広島と長崎はホロコースト。アボリジニの苦難。アメリカ人特有の自分だけが正しいという独善性。地下鉄サリン事件や東日本大震災時に日本にいた著者。著者を魅了する宮沢賢治の世界。「戦場のメリークリスマス」の裏話。根拠のない謝罪をする組織ぐるみの無責任、忖度の国日本。ソ連軍によるカティンの森虐殺など、歴史の勉強にもなる興味深い本。2021/03/18
Hiro
5
本書は十分共感できる誠実な本であるが、通読して私には何かまだ食い足りないところが残る。書名にある、米国人をやめた理由を、もっと詳しく赤裸々に語ってほしかった。割とあっさりとドライに触れられて、あとはもっぱら東欧や日本やオーストラリアでの異文化体験や様々な文化人との交流に多くのページが割かれている。これが対立と格差が増す不寛容な昨今の社会状況を憂うるエッセイ集ならともかく、私はコスモポリタンな著者の人生がどうやって形作られたのかを本質的に理解したかったのだ。なぜほかでもない日本に惹かれたのかも含めて。2023/03/05