新風舎文庫
「ひかりごけ」事件―難破船長食人犯罪の真相

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  • サイズ 文庫判/ページ数 381p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784797498233
  • NDC分類 916
  • Cコード C0195

内容説明

1943年、陸軍所属の徴用船が厳冬の北海道・知床岬で難破。生き残った船長と乗組員の少年の二人は、氷雪に閉ざされた飢餓地獄を体験するが、やがて少年は力尽きて餓死。極限状況のなか、船長はついに少年の屍を解体して「食人」する。遭難から二カ月、一人生還した船長は、「奇跡の神兵」と歓呼されるが、事件が発覚すると、世界で初めて「食人」の罪で投獄された―。名作『ひかりごけ』の実在する主人公から、十五年の歳月をかけて著者が徹底取材した衝撃の真実、そして事件の背後に蠢く謎とは?太平洋戦争下で起きた食人事件の全容に迫る。

目次

第1部 裂けた岬(約束;戦雲;遭難;番屋;食人 ほか)
第2部 知床にいまも吹く風(『ひかりごけ』の背景;新聞はなぜ沈黙したのか;船長のたどった道)

著者等紹介

合田一道[ゴウダイチドウ]
ジャーナリスト。1934年北海道生まれ。北海道新聞編集委員をつとめる傍らノンフィクション作品を発表
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おMP夫人

19
戦時中の日本で実際に起きた食人行為を扱った本です。2部構成で、第1部は食人という禁忌を犯してまで生き延びた男性が戸惑いながらも事のあらましを語っていく展開で、そこには『ヒト』としての本能、『人間』としての苦悩、『臣民』としての悔恨が入り乱れ、生半可な気持ちではとても読むことはできません。第2部は、この出来事を外から見たもので、特に真実が埋もれたまま創作が一人歩きし、それが事実となっていき、男性を苦しめる事になる過程は、当時の状況を差し引いたとしても、現在に共通するところが多いのではないかと感じました。2012/08/04

CTC

9
05年新風社文庫、単行本ともに94年恒友出版刊の『裂けた岬』(98年幻冬舎アウトロー文庫)と『いまも吹く風』を合本し、加筆修正したもの。著者は北海道新聞記者から転じたノンフィクション作家。「ぼつぼつと話すようになったのはあって七、八年くらいたってから」。所謂“ひかりごけ事件”の犯人に15年に亘って継続取材した成果とその周辺を記す2部構成。事件自体は武田泰淳の『ひかりごけ』の題材となった、戦中真冬の知床での破船遭難による6名の死と食人。完全密室で真相は知りようもないことだが…これは意味のある本でした。2025/03/12

8
種の保存という観点からは、共食いは愚かな行為であり否定されるものだと思う。食人は倫理的に許されない行為であるという世間の認識も、秩序の保たれた社会の中では理解出来る。だが、他に何も食べるものがない場合はどうだろうか。わたしたちは動植物を食べることにより栄養を摂取する生物なのだから、船長のような極限状況に陥ったとき、屍を食べる、というのは当然のことなのではないだろうか。食べなければ死んでしまうのだから。世間の拒絶反応の大きさには驚いた。自らが同じ極限状況に陥ることはないと思っているから批判出来るのだろう。2015/06/02

まめお~

4
知人に武田泰淳氏の「ひかりごけ」を紹介されたが、この事件をモデルに創作した戯曲と知りこちらを選んだ。船長、船長の奥さん、食べられたシゲさんの家族、近隣住民・・どの立場に自分を置き換えてみても想像ができない。ただ、この船長が亡くなるまで悔やみ、重い重い十字架を背負い続けたことは理解した。【戦争】は船長の食人とは直接関係しない(戦争がなければこの難破もなかったかもしれないが)。その後の裁きや報道においては戦争が深く関係し、その点も著者は追及している。15年を費やした取材は、相応の作品を生み出している。2015/02/25

卯月

4
再読。昭和18年、船が難破して真冬の知床岬に漂着。仲間の死体を食べ生還した船長本人に取材した『裂けた岬』と、事実と異なる噂が流布した経緯を追う『知床にいまも吹く風』を合わせて文庫化した本。予備知識なしに買って問題なく読めたが、武田泰淳の小説『ひかりごけ』に対する自分の感想を持って読んだほうが良いとは思う。捜査への軍の圧力、詳細が報道されず噂で真相が捻じ曲がるのは、戦時中という状況ゆえ。しかし“難破による孤立、飢餓”という事態は現代でも起こりうる。29歳で遭難した船長は平成元年、自責しつつ76歳で逝去。2012/07/02

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