内容説明
「百の頂きに百の喜びあり」と深田久弥氏が書いた著書『日本百名山』から幾星霜、現在の日本の山々は荒廃し、見るも無残な姿を露呈している。ブームの影で堆積してゆくゴミ、忍び寄る観光開発の魔手、そして「山の分割・民営化」。手ぬるい行政、なりふり構わぬ開発業者、踊らされる消費者に著者の怒りが爆発する。刻々と近づく「山が山でなくなる日」。荒廃の進む白馬岳、八ヶ岳、白山、富士山、そして槍ヶ岳の惨状に触れ、日本の山の行く末に警鐘を鳴らす。これからの山のあるべき姿を考える一冊。
目次
第1章 大雪渓と花畑の陰で―冬季五輪に揺れる白馬岳(百名山ブームの陰で;乱開発の予兆 ほか)
第2章 悲しいほどに破壊ラッシュ―八ヶ岳が山でなくなる日(ストップ・ザ・カイハツ;山が山でなくなる日)
第3章 憧憬と幻滅―狙われる白山(永らく夢みた白山山行;憧れの山の夢と現実 ほか)
第4章 滅びゆく霊峰―富士に開発は似合わない(“霊峰”は泣いている;富士に迫る沈黙の日)
第5章 槍ヶ岳は見ている―三俣山荘と山の分割・民営(列島第三の高峰、槍ヶ岳;“雲上の集い”に向かって ほか)
著者等紹介
加藤久晴[カトウヒサハル]
東海大学広報メディア学科教授。早大文学部出身。日本テレビ勤務を経て、現職。“石神井山の会”顧問
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
96
【図書館本】正直言って読まなきゃ良かったと思う本。この本が悪いのではなく、ここに書かれている内容が酷いのである。書かれたのは長野オリンピックが開催される前の94年、バブル経済もあってリゾート開発が活発な時期。基本的なマナーも守れない登山者、「経済振興」を盾に行われる乱開発。悲しくなるばかりだ。深田久弥もこんなになることを思って「百名山」を書いたのではないだろう。とはいえ、著者も私もそれを安易に非難はできない。開発された林道をバスにあるいはロープウェイ乗り、登山に行く。批判するだけでは何も変わらない。★★★2018/02/02
やっちゃん
8
30年前の環境破壊を嘆く本。バブル景気でそこら中を開発したあおりが山の環境悪化を招いていた。現在それほどなく保たれてるのは不景気で金がないのが原因のひとつかと思う。進行中なのは南アのリニアか。何はともあれ行政、企業、登山者のモラルは間違いなく昭和より向上している。当時の山小屋の安さに驚愕した。2024/11/10
ressenti-man
4
暴露主義的な自然破壊批判で、あまり面白くない。やたらビール飲むところとかおっさん臭いところ含め、読んでいて不快。「続」「新」と続いているようだが、読まなくていいだろう、と。2009/12/05
yamakujira
3
百名山ブームを背景にした乱開発を批判する。山々の惨状に暗澹とするけれど、百名山に集中する登山者にも問題は多いだろう。百名山に集まる登山者は、開発が進んで利便性が高まることを歓迎しそうだ。地域経済との関係も無視できないから、開発を批判するばかりではだめだろう。 (★★★☆☆)
Shoichi Kambe
2
*山の中にまで資本の論理(金儲け主義)が浸透しつつあるのと、山の環境保全に当たるべき行政の怠慢や業者との癒着に根本原因があるのだが、登山者自身にも問題が多い。 *八ヶ岳。ゴルフ場、スキー場、別荘地、道路など全くうんざりするくらいの開発計画が八ヶ岳をターゲットにしている。 *1946年から50年近くも、北アルプスの奥地で三俣山荘ほか計4ヶ所の山小屋を経営している伊藤正一さんのもとへ営林署から小屋の撤去命令1989年 *使用料の未払い。土地の評価基準から売上高方式に変更。大幅な地代値上げ。裁判「撤回させる会」2022/10/30