内容説明
一九六六年(昭和四一年)六月三〇日未明、静岡県清水市(当時)味噌会社専務宅から出火。焼け跡から一家四人の遺体が発見され、刃物による致命傷を受けた後に焼かれたことが判明した。二ヵ月後、味噌会社従業員の元プロボクサー、袴田巌が、パジャマについていた血痕とガソリンを理由に逮捕される。不自然な証拠が波紋を呼び、事件の謎が解明されないまま、八〇年死刑判決確定。数多くの矛盾、不合理、つじつまの合わない現象が浮かび上がるこの事件の謎に、ドキュメント(記録資料)とルポルタージュ(現地取材)の両面から迫る。
目次
「袴田事件」と謎
火災発生
放火は故意か偶発か
強盗罪の成否
事件前夜まで
重要参考人
人格証拠
家庭・離婚・子供
逮捕、勾留
自白
供述調書
五万円を預けた女
五点の衣類
第一審判決
東京高裁の争点
遺体の傷
再審に向けて
著者等紹介
山本徹美[ヤマモトテツミ]
1956年、山口県徳山市(現周南市)に生まれる。週刊誌、月刊誌などに単発、連載記事を執筆しながら、1992年『夢オグリキャップ』(日本経済新聞社)を上梓、翌年『袴田事件』、続いて、『野球界裏工作あり』(電子書店パピレス)、『誇り 人間張本勲』(講談社)とすべて書き下ろしで発表。現在も雑誌に寄稿、「身過ぎ世過ぎをしながらも、書き下ろしにこだわる」姿勢を維持している
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感想・レビュー
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Hiroshi
6
袴田事件の第1次再審請求が地裁に係属している時に書かれた本。文庫本化されたのは高裁に係属している時。その後第1次再審請求は平成20年に最高裁で棄却された。直ぐに第2次再審請求がなされ、平成26年に静岡地裁が再審開始と袴田氏の死刑及び拘置の執行停止を決定した。著者が記録資料と現地取材から当該事件の事実を探り、警察・検察側の言い分ではどうしても理解・納得できないことを記した。昭和41年6月30日午前2時頃の火事で発覚した専務一家4人の殺害事件。東海道線の線路を挟み、南に味噌工場があり、北に専務の自宅があった。2024/01/24
Ikuto Nagura
6
「肝に銘ずべし。人間の作為など事実の前にあっては無為に等しい。私には、隠された事実が反撃をしているように思えてならない。それは追撃の手を緩めることはあるまい。事実は百年経っても不変である」第一次再審請求までに判じている事実を徹底的に記し、どの事実も袴田の無罪を指し示すことを強く訴える。92年に著された本書の事実だけでも、捜査と裁判のデタラメさに怒りが湧くのだが、現実はさらに斜め上。検察が隠していた証拠やDNA鑑定により、さらなるデタラメが発覚して再審決定。このデタラメに対する責任は誰一人問われないんだ…。2015/09/22
肉尊
4
1966年、清水市で発生した強盗殺人放火事件(袴田事件)を供述調書や裁判の証言を元に再検証していく一冊。犯人しか知り得ない情報もなく、捜査機関の筋書き通りに裁判は進んでしまいます。残された物的証拠から導き出せるのは不可解さしかありません。裁判員ともなりうる現代、真理を見抜く力は必要です。袴田さんが無罪を勝ち取る日が来ることを祈ります。2017/07/30
Gen Kato
0
再審請求のニュースを受けて再読。このようなずさんな捜査がなぜ許されてきたのか、ただ慄然とするばかり。どうか袴田氏が存命中に、今度こそ公正な裁判をと祈るばかり。2014/03/27