内容説明
青山墓地に近い老朽アパートに住む、駆け出しのフリーCF演出家・雨宮三郎は、絵コンテを描く難聴の有泉遙子と出会う。彼女が弾くピアノ曲をきっかけにエリック・サティの音楽へ没頭した三郎は、奇妙な曲「ヴェクサシオン」に取り憑かれる。苛だたしいほど美しく愛らしいこの作品は、三郎の鼓膜の内側に滑り込んでいく…。二人の出会いを通して綴られる音楽と文学と絵画の三重奏。野間文芸新人賞受賞作。他に姉妹作品『苺』を収録。
著者等紹介
新井満[アライマン]
1946年新潟市生まれ。上智大学卒業。株式会社電通入社後、作家、作詞作曲家、歌手、写真家、ビデオプロデューサー、DJ、長野冬季五輪プロデューサーなど多方面で活躍。1987年『ヴェクサシオン』で野間文芸新人賞を、翌年『尋ね人の時間』で芥川賞を受賞。自然環境問題をテーマにした小説や写真集など著書多数。日本ペンクラブ常務理事
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感想・レビュー
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KAZOO
118
久しぶりに新井さんの純文学を読み直しました。最近は古典の現代語訳のようなものが多く、純文学を出してくれません。この作品は男と女が出てくるものですが、透明感のようなものがあり私は好きです。エリック・サティの音楽やアンドリュー・ワイエスの絵の話、環境ビデオの話が出てきて私には楽しめます。再度むかしの新井さんの作品を読み直していこうかと思います。2016/02/04
Tomoaki Yoshino
3
初新井満作品。芥川賞を読んでみようと思ったときに出会った新井作品。会話の小洒落た感じが好き。苺とヴェクサシオン、生と死、両方が描かれているのだなと感じた。もっと他の作品も読んでみたいと思う。2015/04/28
ほそはら
2
どこにも行き着かない閉塞感が常につきまとうのに、それがすごく心地良い。そうさせるのは主人公が集める無音の海のビデオと物語の底流にあるリストの音楽の効果だと思う。静謐さ漂う作品。2015/08/20
祐紀
2
素晴らしいと思ったが、村上春樹の匂いぷんぷん。ただ目線が最高。2009/12/05
K
0
【再読】2018/02/12