内容説明
このお話は、ギリシャのサントリーニ(ティラ)島を訪れたとき、とある小さな雑貨店で手に入れた一冊の本のなかの、ひとつのお話であることをここにおことわりしておきたい。すべて現代ギリシャ語で書かれたこの一冊一万ドラクマ(購入時、十ドラクマ四・七円)の本は、店の人の話によれば、紀元前九世紀の古代ティラ遺跡から発見された原本を元に、現代ギリシャ語に刷り直されたものらしい。発見された原本は、すでに考古学博物館建造中に粉失してしまったらしいが、紀元前九世紀といえば、まだギリシャ神話の神々に、その名前が与えられる一世紀も前のことであり、これは大変な書物ではないかと、納得して購入したものである。