内容説明
本書は五つの論文からなる。社会保障改革の様々の局面に登場する法主体の性格を、著者の実務経験の中で生じた疑問点を中心に、人間、医療法人、健康保険組合、社会福祉法人、市町村に関わるテーマにつき考察を行った。第2論文から第5論文においては、制度の前身や改正経緯を尋ね現在のホットイシューを歴史的パースペクティブの中で少し距離を置いて検討することにより新たな視座を拓いている。第1論文では、社会保障における中心的法主体たる「人間」とは如何なる存在であるのかを原理的な観点から考察することにより、社会保障に対する著者の基本的視座を明らかにした。
目次
1 社会保障の内容及び根拠―ヌスバウムを導きの糸としつつ(社会保障の保障内容;社会保障の保障根拠)
2 医療の非営利性の要請の根拠(医療法における「医療の非営利性」に関する規定;医療の非営利性の要請に関する規定の歴史的由来;医療の非営利性の要請の根拠についての学説・判例等;医療の特性及びそれから導かれる要請;医療の非営利性の要請の根拠の考察;応招義務と医療の非営利性の要請)
3 医療保険における保険者と医療機関の直接契約制の導入の可能性―健康保険組合について(健保組合の保険者機能;健保組合と医療機関の関係;直接契約制についての考察)
4 社会福祉事業の範囲に関する一考察(社会事業法;制定時の社会福祉事業法;社会福祉事業における共通要素の変化―老人福祉業を例に;現在の社会福祉事業における共通要素についての考察;今後の社会福祉事業の在り方)
5 介護保険制度における市町村の責任(公的責任についての予備的考察;介護保険法に関連する先行制度;介護保険法における市町村の責任;市町村を介護保険の保険者とした理由)
著者等紹介
新田秀樹[ニッタヒデキ]
1958年東京都に生まれる。1981年東京大学法学部卒業。1981年厚生省入省。健康政策局、保険局、老人保健福祉局などを経て、1998―2000年名古屋大学法学部及び同大学院法学研究科助教授(社会保障法)。現在厚生省医薬安全局企画課医薬情報室長。著作に『福祉を考えるヒント』(近代文芸社、1995年)
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