内容説明
“金曜の夜、ニューヨークで一人の男が死んだ―”1985年、核戦争の危機が目前に迫る東西冷戦下のアメリカで、かつてのヒーローたちが次々と消されていた。これはヒーロー抹殺計画のはじまりなのか?スーパーヒーローが実在する、もうひとつのアメリカ現代史を背景に、真の正義とは、世界の平和とは、人間が存在する意味とは何かを描いた不朽の名作。アメリカン・コミックスがたどり着いた頂点がここにある。全ページ再カラーリングに加え、48ページにわたる豪華資料を収録した完全改訂版。SF文学の最高峰ヒューゴー賞をコミックとして唯一受賞し、タイム誌の長編小説ベスト100にも選ばれた、グラフィック・ノベルの最高傑作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
90
読了まで時間が掛かりましたが、HBOで(原作より時が経った形で)ドラマ化されるまでには間に合った・・・。先に映画を見ていたのだが、原作を読むと至るところで伏線が張られ、しかもミステリーとしてもフェアプレイである事が分かる構成になっていたのが凄い。そしてヒーロー達だけでなく、モブとして処理されがちな者(二人のバーニー、ジョセフィンと元恋人、タクシー会社の兄弟、マル夫妻、そして生まれたばかりの怪物でさえ)にも人生の重みはあったのだと伝えてくれる。特に最初と最後の頁のネームへの情報量に尊敬の念がこみ上げてくる 2019/05/18
HANA
65
who will watch the watchmen?条約によってヒーローの活動が禁止されたアメリカ。そんな中一人の引退したヒーローが殺された……。いやアメコミの地位を一気に引き上げた傑作の名に恥じず面白かった。現実とヒーローをリンクさせるのは今でこそ数多いが、最初期にして最大の傑作だなあ。80年代冷戦当時の核戦争が身近にある生活や、ヒーローにもある私生活。作品は全編暗いトーンで進行するし、随所の張り巡らされた伏線は気になるし。特にロールシャッハが嵌められてからは一気読み。今から映画版の方を見なければ。2017/05/14
Vakira
55
「今、この地に集う我々は、好むと好まざると拘わらず、世界の自由を守る城壁の見張りとなる宿命なのです」By JFK。マスクドヒーロー。スーパーマンの様に超能力はありません。バットマンの様な身体能力と武器とマスクがヒーローたる由縁。1939年という第二次世界大戦前にマスクドヒーロー7人でミニッツメンは結成される。自警組織。善悪の判断は自ら行い鉄槌を下す。しかし1949年自警防止規則が制定され解散。Drマンハッタンとコメディアンの2人は政府に雇われ継続。そのコメディアンが殺害されたところから物語は始まる。2021/08/15
白義
28
冷戦が徐々に加熱し、破滅へと向かっていく時代。状況自体のあまりの馬鹿馬鹿しさに、全ての正義がコメディでしかなくなっていく世界で、自らの信じる道を生きようとしたオジマンディアスとロールシャッハは、その狂気と愚かさゆえに意志を貫き真実のヒーロー足りえたという点で、鏡のように似通った存在だと言えるだろう。そんな二人とまた、対照的に、ドクターマンハッタンは全能の力を持って全てを見渡すが、それゆえの幻滅と虚無感が、彼が神でもサタンでもない、巨大な力と運命に流される人間だということを示唆している2014/05/22
GM職員
23
金曜の夜、ひとりの男が殺された。被害者は米政府公認ヒーローとして工作活動をしていた壮年男性。夜な夜な非合法自警活動に勤しむ男・ロールシャッハが事件を追うが、次々と元ヒーローが狙われ─。同時代のニューヨークを舞台にした80年代傑作コミックを初読み。冷戦下の核戦争の緊張感に根差した、当時特有の世紀末観の中で「ヒーローとは何か」の問いを突き付けられた。善人と悪人と超人と狂人…そのどれかであり、そのどれもでもあるのかもな。それでも、目の前の困っている人や助けを呼ぶ声を見過ごせないのがヒーローであって欲しいと思う。2023/06/18
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- 和書
- 肉体の学校 ちくま文庫