内容説明
ある「語り部」とのインタビューをつづける“わたし”は、彼が「被爆者になる」という語りで表現しようとする生きかたに関心を抱いた。すでに被爆者であるはずの彼は、なぜ「被爆者になる」と語るのだろうか。ロバート・リフトン、石田忠、米山リサらによる優れた先行研究に導かれ、長崎の被爆による極限的な体験をした人々の記憶をいかに後世に伝えるかに苦闘する三人の“語り部”への一〇年にわたるインタビューをとおして、“語りえない”心の痛みを抱えながらどのように日常を生きていくことができるのか、かれら被爆者の存在に限りなく迫る渾身のライフストーリー作品である。
目次
序論 “わたし”という視座からアプローチ
第1章 “語りえないもの”と記憶の語り
第2章 「長崎」の記憶の地図
第3章 「被爆体験」身体的複製
第4章 被爆体験の言説化
第5章 「被爆者になる」ということ
著者等紹介
高山真[タカヤママコト]
1979年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。現在、慶應義塾大学文学部非常勤講師、慶應義塾大学大学院社会学研究科訪問研究員。専攻は社会学、ライフストーリー研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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わかば
0
大学のレポートのために読了。時間を忘れてじっくりと読んでしまった。特に、インタビューから対話へ対話から、さらに今度は話を聞いてもらう側へと変容していく関係性とその人自身がすごくいいと思いました。文章も読みやすいです。2024/05/22
yi
0
p.36 自分自身では明確に把握することができず、誰かに説明することもできない「語りえないもの」をかかえながら、人は、どのようにして、力強く生きていくことができるのか。 p.74 ある出来事を体験し、その体験を語ろうとするときに生じる、さまざまな感情、心情を内省的に見つめて解釈する営み、その営みを他者に理解可能な形で説明する営みについて、彼は語りつづけている。2023/05/23
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