内容説明
生活の日常を読み解くことからつむぎ出された柳田国男の歴史研究は、戦後の人文・社会科学のなかで数多くの誤読にさらされてきた。著者は歴史社会学の視点から、その学知と方法の復権に挑む。テクスクの意外な生態を精緻に押さえ、この思想家の実践に孕まれていた希望をさぐり、「複数の柳田国男」の可能性を提示するなかで「民俗学」の再生を展望する。
目次
プロローグ 再び「柳田国男の老い」をめぐって
第1章 テクスト空間の再編成―『柳田国男全集』の試み
第2章 「遠野物語」から「郷土誌」へ
第3章 柳田国男と写真―「自然主義」と「重ね撮り写真」の方法意識
第4章 歴史社会学の方法と実践
第5章 方法としての民俗学/運動としての民俗学/構想力としての民俗学
第6章 近代日本民俗学史のために
著者等紹介
佐藤健二[サトウケンジ]
1957年、群馬県高崎市に生まれる。東京大学教養学部助手、法政大学助教授を経て、東京大学大学院人文社会系研究科教授。博士(社会学)。専攻は、歴史社会学、社会意識論、社会調査史、メディア文化など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
29
柳田国男が見せる新しい顔。特に後半、描かれているのは本人じゃなく、糸魚川や大阪で、柳田の雑誌への投稿を機に魅力的なネットワークに誘われ、生涯学びを楽しむことになった民間学者たち(宮本常一もその一人)なのに、そこに強く柳田の喜びが感じられる。◇全集の編集方針についての一章もいい。正直最初些末な事と思ってしまった不明をガツンとやられた。言説の作り出す場がどのように成り立ち、そして個人はそこにどのように関与していけるのか、こんなにリアリティを持って読めたのは稀有な体験だった。◇これが、対象への愛情ということか。2016/07/04
takao
4
ふむ2024/05/12
iwasabi47
3
方法としての柳田。柳田國男のその可能性の中心。感想はまたアトで。2020/12/31
ぷほは
1
出た直後に半分位読んで、その後ほっぽり出してしまっていた。とても面白かった。「社会学が『個人』を対象に扱うことは難しい」とあちこちで言われるし、事実そうだとも思うが、博士論文のころから一貫して柳田を主題として・対象として・さらには方法としても扱い続ける著者の面目躍如といったところか。東大の学術俯瞰講義で今も無料で視聴できる著者のクダン論も素晴らしい。社会学が「二週目の学問」だというのが、資料や主題の水準では他の学問と区別しにくいのに、こと方法の基準ではとてもよく分かる。これが「遂行的に示す」ということか。2015/09/30