内容説明
ライフストーリー・インタビューをとおして生活と差別のはざまで日本の変動期を生きた人びとが紡ぎ出す魂にふれる九つの物語。
目次
1 被差別の境界文化
2 起源と伝承―教訓の物語
3 危機と適応―史実に残らない抵抗の物語
4 共同と亀裂―祝祭の物語
5 愛と掟―男女すれ違いの物語
6 粋と惨め―出世できないむらの物語
7 憧れと悲哀―越境の物語
8 巧みと寂寥―職人の魂の物語
9 当惑と悦び―継承の物語
10 沈黙と豊饒―隠された世界の物語
著者等紹介
桜井厚[サクライアツシ]
現職、千葉大学文学部教授。専攻、ライフヒストリー/ライフストーリー研究、社会問題の社会学
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感想・レビュー
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アナクマ
27
1章。導入部。部落の人の語りの意味づけ。なぜそれが語られるか◉ライフストーリーを語ることは、コミュニティや全体社会との関連性のなかに自己を位置づけること(経験の歴史化)なので、新しい声の生成のためには、戸惑い・矛盾・非一貫性・沈黙を権威が規制してはいけない(p.50)◉ 境界文化の定義。それは、支配的文化の周縁に位置する、自律的・逸脱的な生活の論理。 生きる悪知恵(生活戦略と読む)というワードや、縁(ヘリ)が面白いという某の声を思い出す。少し込み入った理屈を頭で理解する前に、先に進んで語りに耳を傾けたい。2020/02/05
二人娘の父
5
「人びとはライフストーリーが生みだされる源泉となる生活史経験をもち、その経験をもとに…ストーリーを構築する…同時に、人びとは語ることによって自らの経験を構築し、生活史経験といわれるものを再編成する」(はしがき)...ということで始まる滋賀県湖北・湖東・湖南のいわゆる被差別部落についての調査記録。著者は語り手、聞き手との相互作用・相互的な構築に重点を置く。その積み重ねが人々の社会観、歴史観につながるという主張である。ライフストーリーとは「物語り」であり、「語り」とは異なる。そうした問題意識を強く感じている。2023/06/18