内容説明
520人の命を奪った日航123便墜落事故…。20年にわたる取材で明らかになる真実。垂直尾翼の突然の損壊・消失という前代未聞の原因。墜落現場が特定できず救出を遅らせた自衛隊。米軍の救助が寸前で中止された事実。相模湾から尾翼の破片をすべて回収することなく、早々と出された事故調の結論などなど。著者が執念をかけて追い続けた渾身の一冊。ボイスレコーダーの分析も入って、ついに文庫化。
目次
第1章 墜落現場をめざして
第2章 墜落現場確認はなぜ遅れたのか
第3章 米空軍アントヌッチ中尉の証言
第4章 ボイスレコーダーの分析
第5章 事故原因の真相究明
第6章 事故調査委員会のあり方
第7章 遺族の思い
著者等紹介
米田憲司[ヨネダケンジ]
1944年、大阪市生まれ。ジャーナリスト。航空、鉄道、軍事、環境問題等の分野で活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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加藤久和
8
520名が亡くなった日航123便墜落事故の謎についてかなりの精度で真実に肉薄していると思う。原因調査の最大のポイントである衝撃音の後の機内の急減圧はやはり無かったと考えるのが妥当だ。墜落後20分で現場を発見し2時間後には救援ヘリを送り込み救助を開始しようとした米軍の実力はやはり凄いと言わざるを得ないが、それを受けた自衛隊の奇妙で怠慢な行動により実際の救助活動が始まったのは墜落後じつに18時間を過ぎていた。日本の事故調査委員会のデタラメぶりには呆れるしかないがこれでは航空事故で亡くなった方々も浮かばれまい。2017/08/20
Ikuto Nagura
5
今年はあの事故から30年。多くの矛盾点がある事故調査委員会の最終報告を「政治判断による産物」であるとみて、再び事故を繰り返さないために真の原因を追究しようとする力作。事故原因について、著者の推論だけでなく複数の専門家の仮説が紹介されており、様々な流言も飛び交うこの事故を、多角的に振り返ることができる。願わくはこれらの仮説が、現実の航空機の設計・製造・整備などに反映されていてほしい。また、横山秀夫『クライマーズ・ハイ』のような事故報道の特ダネ合戦に、赤旗も参戦していた上に、他社をリードしていた事実が面白い。2015/08/03
hayatama
5
事故調査って科学的分析なわけで、こういう各論併記は非常に良心的に思えるねぇ。やっぱり事故調の報告書はどう考えてもおかしいよね。藤田日出男の作と並べて読んでも読み応えあり。2011/08/03
Naomi Araki
4
1985年夏の日航機墜落事故についての検証。2005年に発表されたDVD付き商品の文章部分だけを2011年に文庫化したもの。海外メディア等でも未だに紹介される規模の大事故で、事故原因について諸説あるが、なかなか丁寧に検証されている。結果、あまり辛い気持ちにならずに納得できるのが救い。当時のことを思い出すと心がズキズキ痛くなっていたけれど、約30年もの時間を経て、冷静に事故原因を著者とともに考えることができる。2014/04/18
てんきゅ
3
123便関連の本はこれで4冊ぐらい読みましたが、どれも墜落原因が違う。この本はミサイルに打ち落とされたといったトンデモ説ではなく、真摯なドキュメントという印象です。なぜ自衛隊は、救助しようとしていた米軍を追い返し、墜落場所を4度もウソの発表をしたのか?そして、ここに出てくる全く機能していない事故調査委員を見ると、冤罪を多発する警察・検察の捜査、震災のドキュメント風映画など、「こういったストーリーにしよう。」と決めたら、それに沿ったネタだけ取り上げて進めていく組織が多いんだなあ。と思いました。2014/03/15