内容説明
東京でインテリア・アートの販売員をするOL、真紅。仕事に挫折し、母親の待つ故郷に帰るべきではないかと悩んでいたある日。ふと立ち寄った宝石店で出会った見知らぬ中国人紳士に運命的な恋をする。真紅は「また会いたい」という一心で、紳士に渡された電話番号を頼りに上海に渡る。まるで見えない糸に導かれるように再会する二人。未来は、幸せなものかと思われたが―。上海を舞台に繰り広げられる大人の恋愛物語。
著者等紹介
原田マハ[ハラダマハ]
作家、キュレーター。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒。伊藤忠商事株式会社、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館(MoMA)勤務を経て、2002年独立。フリーランスのキュレーターとして、国内外の展覧会、シンポジウム、アートコーディネートを手がける。2003年より、カルチャーライターとして執筆活動開始。2006年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、本作は2009年に映画化され話題となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
158
パッとしない女子が、ひとかどの男に見初められ磨かれていくうちに、才能を開花させてしまうという、シンデレラ・サクセス・ストーリーです。さして向上心のないまま日々を過ごすOLさんが、ふとしたきっかけで恋にキャリアにと、全く別のステージにのぼっていくのです。 女性読者が好むよくあるお話といえば、それはその通りなのですが、だからこそ如何にオリジナリティをだしていくかが、作家のウデの見せ所。ボーイ・ミーツ・ガールのありふれたラブストーリーとは違って、せつなさをきっちりと印象付ける重厚な仕上がりになっています。2019/11/10
ちょろこ
148
魅了された一冊。#9に秘められた極上のラブストーリーに極上の時間を味わえた。恋愛モノは苦手だけど、大人のしっとり揺れる、時に激しく揺れる恋愛というものに魅了され、錆びついていた自分の恋愛の扉を優しく開かれた気がした。マハさんの筆致にかかるとアートも恋愛も同じかなと感じる。情熱的な一瞬も良いけど、やっぱり理屈じゃない、心の奥底が共鳴するような、繋がりを感じる、それが真の恋愛、自分だけのアートなんだろうな。触れられないせつない、けれどかけがえのない想い。心が還る場所。緑の田園風景は確実に彼女だけのものだ。2021/07/07
AICHAN
133
図書館本。マハさんの経験してきた仕事や体験を反映させた作品だと思う。『ごめん』もそうだと思うし、他の作品でも自分の体験をモチーフにすることが多いように思う。それはともかく、素晴らしく引き込まれて読んだ。『楽園のカンヴァス』でマハさんのすごさを知り、『カフーを待ちわびて』で瑞々しい文章に心惹かれ、『風のマジム』で虜にさせられた。そしてこの作品では瞠目させられた。マハさんの豊かな想像力に脱帽。これまで読んだマハ作品のうちで一番心打たれたかもしれない。映画化を強く望む。2019/05/30
SJW
124
原宿でインテリアアートのキャッチセールスをしていた真紅は、客を騙すことが耐えられなくなっていた時に、立ち寄った宝石店で中国人の青年に惹かれてしまう。渡された電話番号を頼りに上海に行き再会し、中国の骨董品や美術品を学び経験を積みながら、館のコレクションを揃えていく。上海の賑やかな街角やトレンディな地域、古い街角の描写に以前訪れた時の思い出が重なり、懐かしさを思い出させてくれた作品だった。2021/05/09
じいじ
123
都市開発に揺れる上海を舞台にした、シンデレラ・ラブ小説は、ストーリーが波乱含みで面白い。願わくば、主人公真紅が最初の恋に落ちるまでの心の動きをもう少し丁寧に描いてほしかった。真紅の男性観には共鳴できないところもあったが、仕事に立ち向かう姿勢には魅力を感じた。真紅に「好きなことをして(のちの人生に悔いを残さないよう)人生を生きること…」と諭す母親の心の広さ、やさしさに魅かれた(夫に先立たれ、単身北海道で暮らす寂しさの中で、娘に頼りたい気持ちをこらえて…)。原田マハは3作目だが、もっと追掛けたくなった。2017/02/18