内容説明
北海道の北端に大樹海が広がっている。神奈川県の広さに匹敵する広大な森だ。平均気温は北極圏より低く、冬にはマイナス40度を下回る日も珍しくない。そんな土地の研究林を管理する鳥類学者の元で年末年始を過ごそうと、彼の親族や学者仲間たちが集まっていた。そこへ、ヒグマに襲われたという密猟者が逃げ込んでくる。車が横転してしまい動かず、電話も通じない。小屋に集った人々は完全に孤立してしまったのだった。やがて、体重350キロを超す巨大なヒグマが小屋を襲う。秋に食いだめに失敗して冬眠できず雪の中を徘徊するシャトゥーン(穴持たず)と呼ばれる危険なヒグマだった。密猟者の銃程度ではヒグマの動きを止めることはできない。ヒグマによって少しずつ破壊されてゆく小屋。そして、人食いヒグマへの恐れが、人々から冷静さを奪い去ろうとしていた…。第5回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞受賞作。
著者等紹介
増田俊也[マスダトシナリ]
1965年生まれ。北海道大学中退。『シャトゥーン―ヒグマの森』で、第5回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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モルク
71
穴持たずのヒグマ、シャトゥーンとの死闘。最初から最後までどうなることかとどきどき。次々と仲間が襲われ餌と化していく。その視点が襲われ今食べられている本人であったりするので、その恐ろしさは尋常ではない。肉や内臓そして骨まで貪り食らう咀嚼音が響き、その様子は目もあてられない。一度狙った物に対する執着心が強く、執念深い、そして怨みは忘れない。300~400㎏の体のわりに敏捷で100㍍をボルトより速く走る。何てやつだ!死んだふり?それとも攻撃か?睨まれたら覚悟するしかない。大好きな熊ものにアドレナリン出っぱなし!2018/03/13
ntahima
47
巨匠ベルイマンの芸術性は認めても時には『悪魔の毒々モンスター』を観たい夜もある。B級パニック小説の決定版!体長3m体重350kgのヒグマが主人公?5tのマイクロバスを持ち上げ100mを7秒で駆ける。奴に狙われたら逃げ場はない!登場人物は己の物語を語る前に呆気なく殺されていく。凶悪ヒグマのプロモーションビデオの様な作品。「娘よ、唐辛子スプレー早く出しなさい!」若い頃ヒグマの聖地日高の谷に遊んだ折、道々にヒグマの足跡や糞。そして夜には不審な物音を聞いた。事前にこの類の本を読んでいたら怖くて寝れなかったと思う。2012/09/07
cryptoryou
41
巨大なヒグマに襲撃され、次々とエサとなり喰われてゆく人間達、人の味を覚え執拗に何度も何度も襲いかかってくるシーンは、まさに動物系パニック映画のようでした。いやはや、穴持たず(シャトゥーン)の熊怖ぇしヤベェ、読んでいるあいだ、ずっとドキドキしっぱなしでした。ただ、終盤になるにつれ、ヒグマがバケモノじみてきて、展開的にも所々ツッコミどころがあり、ラストはもうアクション映画のようで、、、まぁ、小説としては荒削りな気もしましたが、それでも勢いがあって怖くて面白い作品でした。ヒグマ見た事ない、実物凄いんだろうなぁ。2016/10/07
kommy
19
翌日仕事だというのに、面白すぎて夜中に一気読みしてしまった…。時々視点がヒグマに襲われた人間側に移るのが怖すぎて、読んでいる間中動悸が止まらなかった。物語の背景もよく練られていて読みごたえがあったが、肋骨が折れている薫が成人男性を乗せた橇を何時間も引くとか、濡れた靴でビバークして凍傷にかからないとか「いや、無理でしょう」と思う場面は多々あった。クマ本を読んでホラーだと思ったことはあまりなかったけど、この作品に関しては完全にホラー。今日寝れるかな…。2016/04/25
ざるめ
17
極寒の地で冬眠せずに冬を越すヒグマ(シャトゥーン)の母子に翻弄される人間達の1週間((((;゜Д゜)))迫力ある話にぐいぐい引き込まれるけれど、時々引っかかる昭の行動と薫の甘さ(-.-)恐ろしい話だったけれど、これを読んで直ぐに、チーズ入りハンバーグを美味しくいただいた私って…(-_-;)と思った(^^;)2021/06/30