出版社内容情報
ウルトラマンと怪獣たちに“物語”を与えた4人の作家たち
差別・犯罪・初恋・妄執…四人の作家が怪獣に託した《孤独》を《痛み》とともに体験し直す渾身の力作!
【第一章】
金城哲夫・永遠の境界人
【第ニ章】
佐々木守・永遠の傍観者
【第三章】
上原正三・永遠の異邦人
【第四章】
市川森一・永遠の浮遊者
内容説明
ウルトラマンと怪獣たちが織り成すドラマ―少年期から青春時代をとおして、著者がそこに見、感じ取ったものとは?そして、ウルトラマンシリーズの四人の作家がそこに投影した、現実から負った心の傷の痕跡とは?怪獣に夢中になり、時に同化していた少年は、使命を受けたかのように、ドラマを振り返り、その生みの親たる作家たちの軌跡を丹念にトレースする。処女作、待望の文庫化なる。
目次
第1章 金城哲夫―永遠の境界人(未来の記憶;光の子 ほか)
第2章 佐々木守―永遠の傍観者(ハヤタからイデへ;世界の風景化 ほか)
第3章 上原正三―永遠の異邦人(断層;鬼 ほか)
第4章 市川森一―永遠の浮遊者(夢見る力;他人の星 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hanchyan@つまりはそういうことだ
32
「連休中に何読むか計画」の一切をすっ飛ばし、矢も盾もたまらずに再読。綿密に練ったのに(笑) 文庫版解説で宮崎哲弥さんが「一見隙だらけにみえた」と語り起こしてるように、批評という作業のプロからみて本書の方法論はいくばくかの躊躇を喚起するものらしいが、むしろ、だからこそ、このタイトルと装丁にピン!と来て内容も確認せずに書店のレジに直行した自分のような読み手の琴線を揺さぶる一冊となっているのではないか。それほどまでに、本書に採られた4人の脚本家それぞれに対する切通の分析は、いっそ「祈り」めいていて、胸に響く。2022/05/03
緋莢
18
金城哲夫、佐々木守、上原正三、市川森一。4人の作家について書いています。副題に「ウルトラマンの作家たち」とありますが、ウルトラマンシリーズ以外にも「怪奇大作戦」等にも触れている所もあります。この本のタイトルになっている「帰ってきたウルトラマン」の「怪獣使いと少年」(脚本は上原正三)もそうですが、「ウルトラマン」の「故郷は地球」(脚本は佐々木守)、「ウルトラセブン」の「ノンマルトの使者」(脚本は金城哲夫)など、正義のヒーローであるウルトラマンが怪獣(もしくは星人)を倒す(続く 2018/08/04
マーブル
14
著者は四人の内面に深く分け入り、その描こうとする意図、描かずにはいられなかった精神に刻まれた刻印を暴きだす。それは『ウルトラマン』を代表とする特撮作品の評論ですらなく、彼らの人となりを探る行為だ。彼らの心のひだに分け入りながら、己自身の心を晒している。そこに書かれたものはだから、単なるオタクの知識を増やすための蘊蓄ではなく、自らと、自ら以外の存在についてあらためて考えることを要求する。 漆黒の闇に広がる星空を眺めながら、この地球の上に立つ自分と、星々に住まう外星人に思いを馳せるように。2023/05/15
タカラ~ム
9
ウルトラマンやウルトラセブンなどの作品を生み出してきた4人の作家(金城哲夫、佐々木守、上原正三、市川森一)の人生や作品との関わり、ウルトラシリーズに携わって以降の活動などを追ったドキュメンタリー。当時の時代背景や社会情勢、作家たちの出自などが作品に色濃く反映されていたことが本書からよくわかる。平成令和の現代では、社会批判や世相をシニカルに地上波のテレビ番組(しかも子供向け)に込めることもなくなってきていように思う。そういう意味では、この時代の作家には気骨があったということなのだろう。2023/03/25
kurayamadasoga
3
金城哲夫については山田輝子さんの著作を読んでいましたが、後の三人についてはほとんど知りませんでした。たかが子供向けの番組なれど、四人が四人ともそれぞれのの思いを脚本に注ぎ込んでいたことは分かりました。ただ、金城以外の三人については共感はもてませんでした。2014/07/11