内容説明
鳥と土地と女たちの伝説(サーガ)。大塩水湖の増水が鳥たちの住処を奪っていった頃、母のがんが再発した…。本書は鳥と土地をめぐる生態学的な観察記録であると同時に、数世代にわたる家族の生と死と愛の物語でもある。
目次
アナホリフクロウ―水位4204.70フィート
チュウシャクシギ―水位4203.25フィート
アメリカコサギ―水位4204.05フィート
ツバメ―水位4204.75フィート
ハヤブサ―水位4205.40フィート
アメリカヒレアシシギ―水位4206.15フィート
カリフォルニアカモメ―水位4207.75フィート
ワタリガラス―水位4209.10フィート
フラミンゴ―水位4208.00フィート
ユキホオジロ―水位4209.15フィート〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
7
グレートソルト湖で起きた洪水により渡り鳥が相次いで死んでいく描写と、著者テリーの母親が乳がんにより次第に痩せ衰えていく姿が重なりあうように描かれる。この作品の原題はRefugeといい、訳せば「避難所」となる。 渡り鳥にとっては保護区の意味だが、人間にとっての避難所とは何になるのだろうか。死につつある人は、その苦しみから逃れるために、何に助けを求めればよいのだろうか。淡々と語られる口調に感傷は感じられない。受け入れざるを得ないものを、ただたんに受け入れること。そんな達観さえ感じられる。素晴らしい作品だった。2012/04/23
AR読書記録
4
この内容が1冊にまとまっているということからして、ただもうすごい。自然礼賛人間批判に偏するイメージを感じさせず、でも著者の気持ちは深く沁みこんでくるところなども、著述家としての力量と器の広さとを思う。母と娘の物語、代々の女たちの物語、宗教、歴史、人間の営み、自然の営み、それらの相克... どの面からも深く考察すべき内容かと思うが、ひとまず今の私はそうだな、多様なアメリカの草の根のひとつの相を見られたと思うところが興味深かったな。しかし、内容から思えば、この表題と装幀はちょっと違う気もしたな(私はな)...2017/08/22
更新停止中
1
日野啓三の著書で触れられていたので読んでみたが素晴らしかった。個人的な体験とシンクロする部分が大きくて読むのが辛い部分もあったけれど、出会えてよかった本。あまり余計な感想は語りたくない。ただ大事に覚えておきたい。2010/10/11