内容説明
1月6日、昼12時のテレビニュースは、はじめてのらくろ岳友会3名の遭難を伝えた。正月気分も抜けきらぬ午前中の仕事を終えて、スイッチをひねった友人たちの耳に、それは突然飛び込んできた。いったい彼らはどこに消えたのか?その日から小さな山岳会の苦闘がはじまった。消えた足跡を求めて点と点を結んでいく執念の捜索活動。仲間たちの友情と葛藤。妻や親たちの苦悩。ある遭難捜索を内側から描いたヒューマンドキュメント。
目次
第1章 消えた三人
第2章 難解なパズル
第3章 槍への道
第4章 北アルプス証言地図
第5章 赤いヤッケが笑った
第6章 男たちの残像
第7章 常念入山
第8章 一ノ沢遡行
第9章 沢動く
第10章 雪渓の下に
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちくわ
16
1989年正月に槍ヶ岳を目指し行方不明となった山岳会パーティを追跡した捜査記録小説です。北アは夏以外登りませんが、登山口には毎年行方不明者の写真が掲示されています。2016年長野県の遭難者296名、死者56名だそうですが、憧れはあるものの北アルプスの冬山は踏めませんね…2017/10/12
ネオ
6
山岳遭難のドキュメント。遭難した3名の行方を追うために、同じ岳友会の仲間が、山岳情報の中から3人に結びつく証言を積み重ねていく。証言へのたどり方、3人への思い、はやる心を感じながら捜索していく真摯な姿に心うたれました。2024/09/22
ふらら
5
1986年暮れに中房温泉から槍ヶ岳を目指すも遭難してしまったパーティの捜索ドキュメント。自身は夏に同じ表銀座も常念縦走も経験したので、出てくる地名や景色など思い浮かべて読むことできた。雪山で沢に降りてはいけないのに降りるしかなかった荒天。著書が雪上講習に参加して雪崩、雪の力について学んでいるが、たしかに経験は大切。遭難した3人を回収するまで、たくさんの人が山に何度も入って捜索。彼らの結束の強さ、想いに感心。2020/03/11
むん
5
捜索隊側からのドキュメント。なぜ冬の谷筋に降りて遭難したのか。解読プロセスに学ぶ点がとても多い。山は自己責任であるが、雑誌「岳人」記事の問題は、自己責任でかたずけられるものではないと考える。せめて修正記事を載せる等の注意喚起が無いならば、「岳人」は暴走族に改造パーツを売る商売と同じことをしていると感じた。2012/10/19
みん
0
冬山で遭難した3名を捜索するお話。私は登山はしたことがなく、せいぜいハイキングコースを歩く程度ですが、それでも道に迷うことはあります。他に誰も通っていない場所で迷うとパニックになります。スマホで位置を確認するのですが、圏外で地図が表示されません。この本では、登山会のメンバーによって遺体がみつかりますが、その苦労が緻密に描かれています。2024/12/21