内容説明
租界都市上海・植民地都市香港を舞台に、美しい祖国への夢破れアイデンティティーに苦しむイギリス華橋と腐りきった旧制度の大家族に心底愛想をつかしながら逃れるすべのない女性のロマンスの行方を描く「戦場の恋」他、6篇を収める。崩壊していく文明の本質を鋭く問い直す恋愛小説集。シリーズ完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はと
11
張愛玲の短編と楊绛の短編が一緒に収録してある。かなり前に読んだ記憶に間違いがなければ、張愛玲の作品の原文は、都会的で華麗で、とにかくすっごくおしゃれな中国語だった気がする。作品自体は決して明るい内容ではないのに、読んだ後になにやら華やかな香りが残っているような感じがしたものだ。それが、翻訳になるとずいぶんカクカクした文章になってしまっているように感じ、残念だった。少し前に読んだ池上貞子先生の翻訳「傾城の恋」もそうだったから、張愛玲は、日本語に訳すのがとても難しい作家なんだろう。2014/06/26
Ayane
1
英語の課題で張愛玲『封鎖』を読んだついでに。大戦中、日本占領下の上海で栄えた文芸工作活動を代表する張愛玲と楊緯の作品を収めた短編集。特に張愛玲の作品は戦争中に彼女自身が経験した数々の出来事に基づいており、胸に沁みるものがある。人生の大半が戦争の影響を受け、決して幸せとは言えない家庭に育ったとしても、彼女の書く言葉の一つ一つが美しい。2016/12/21
J_L_B_459
0
エキゾチックな上海・香港を舞台に流麗な筆致で描かれる恋愛譚に魅せられた。2009/09/16