内容説明
ドーランと風呂が大嫌いだった天外。ひと晩で原稿100枚を書き上げた花登筐。借金取りのヤクザを10分で追い返した寛美など…。座付作家だった著者だけが知っている「笑い」と「人情」の舞台裏。
目次
第1章 天外との出会い
第2章 寛美の台頭
第3章 楽屋裏のドラマ
第4章 裏切り裏切られ
第5章 『乱れ友禅』の行方
第6章 決別
第7章 「笑い」の終焉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kokada_jnet
23
松竹新喜劇に(中断をはさんで)劇作家としてかかわった著者の、非常に面白い、回顧&暴露本。藤山寛美がとんでもない人だとは知っていたが。渋谷天外も、その劇団内での君臨ぶりは相当のもので、なるほど「喜劇王」というのはそういうものなのね。日生劇場で、天外の演出で雁治郎や章太郎が出演する企画があったのだが。喜劇俳優ゆえのコンプレックスで、演出もできず。演出助手の著者が、演出することになったという。ほかに、花登筺の「発言の誤り」への指摘も書かれている。2018/06/10
浅香山三郎
12
小林信彦さんの『喜劇人に花束を』(新潮文庫)は、松竹新喜劇の外側から見た藤山寛美論だつたが、本書の著者の藤井氏は、新喜劇の文芸部員であつたので、内部のリアルな回顧録になつてゐる。新喜劇の演目の並べ方、渋谷天外の壮絶な執筆スタイル、それを稽古に間に合はせるべく奔走する文芸部員の面々。いまや、かういふスタイルで演劇興行を毎月行へる時代ではなくなつた。公私の区別や、人間関係のウェットな部分が染み込んだ独特の世界がよく分かる。藤山寛美もさることながら、渋谷天外といふ人の功罪両方ある複雑な人柄が、よく描けてゐる。2018/04/18