目次
第1章 序論
第2章 存在してしまうことが常に害悪である理由
第3章 存在してしまうことがどれほど悪いのか
第4章 子どもを持つということ:反出生的見解
第5章 妊娠中絶:「妊娠中絶賛成派」の見解
第6章 人口と絶滅
第7章 結論
著者等紹介
ベネター,デイヴィッド[ベネター,デイヴィッド] [Benatar,David]
1966年生まれ。南アフリカ共和国のケープタウン大学教授
小島和男[コジマカズオ]
1976年生まれ。2004年、学習院大学大学院人文科学研究科哲学専攻博士後期課程単位修得退学。2007年、学習院大学より課程博士(哲学)を取得。学習院大学文学部哲学科准教授。専門は古代ギリシャ哲学
田村宜義[タムラタカヨシ]
1993年生まれ。2016年、学習院大学文学部哲学科卒業。学習院大学大学院人文科学研究科哲学専攻博士前期課程在学中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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新学術間接経費本棚
感想・レビュー
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またの名
18
「両親に 私を存在するようにしてしまったけれども」という献辞が素直なのか皮肉なのか分からない。だがネタ本と言うには愚直なまでに真剣な考察を重ねて、でも結局は生まれてくる方が良いだろうと言い聞かす常識的直観を解体。苦痛をもたらすような人生は始めるべきでなく、人生はおよそ始めるに値しない苦痛ばかりで、存在しない者のためを考えれば人生という害悪に満ちた世界に到来させるよりもカップルが非存在者に「配慮するちょっとした努力」をする方が多くの不幸を回避できると説く。人類の絶滅をも計画的に検討する(アンチ)ユートピア。2018/10/14
H2A
14
反出生主義の代表的な著作らしいので手を出してしまったが、文章もくだけて基本的には読みやすく難解さはあまりない(でも用語に多少クセがある)。アフォリズムではなく論証形式の書き方でおなじみの概念に新しい視点で語り直すので最初の3章まではおもしろく読めた。でもその勢いが最後までは続けられず(自分の読む勢いが)後半は失速。生誕することは害悪、という主張に抵抗はないが、その「反直観的な」「非対称性」による証明にはそんなに納得できていない気もする。2022/09/22
hakootoko
11
代案:言語をなくす。 メモ:これは仏教思想と似てるのかな。もしそうなら、仏教は倫理学的に正しいし、仏教思想を突き詰めると、段階的絶滅以外ないよねってことになる。生まれた人は生きるほかない。そこに悟りというオプションを付ける。苦とか無常とかわからないやつはわからないんだから仕方ないと留保する。だから個人救済で話は落ちる。だが徹底して全員出家させたら生殖を否定するわけだから段階的に絶滅する。2018/03/04
らる
10
『私は私の両親と兄弟に彼らが為す全てのことや彼らの全存在に対して感謝したく思います』との著者の言葉に示される通り「人間嫌い」をベースにして書かれた本ではない。また「生まれてこない」のが良いという話であって、「今存在してる人間」が「居なくなる方がいいか」という話では全くない。要は「自殺した方がいい」という話では、全くない/存在することは、存在しないことに比べて常に害悪だ。根拠の一つは「良い」と「悪い」の間の非対称性。悪いことが無い=常に良いことだが、良いことがない…が悪くなるのは奪われた人がいる場合だけ2021/11/28
富士さん
9
自分の考えとまったく同じことを言っている本書の存在を知った時の震えるような感動は忘れられません。生きる事は苦しみであり、我慢でしかないと語りながら、そんな世界に肉欲と体面に流されて新しい命を叩き込み、しかも自分の苦しみを逃れるための愛玩物として、資源として消費することを恥知らずにも愛とのたまい美化する、このはっきりした害意を帯びた欺瞞が、ふさわしい罰をあたえられずにのさばっていること自体、この世界をおぞましい地獄にしている最も大きな要因です。反出生主義こそはこの最悪で、根深い欺瞞を抉り出す切り口なのです。2020/12/13